南野拓実が挑むリバプール“最強3トップ”の牙城 チャンスは「早くて再来年」の理由
現チームで南野が定位置を掴むためには、天才的な“偽9番”を越えなければいけない
今ではクリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシと争う、れっきとしたバロンドール候補だ。南野はこの偉大な3トップの控え選手として、リバプールに加入した。
それはクロップの「このチームに加入してもらったこと自体、大きな要求だ」という言質からも明らかだし、無論のこと南野本人にもしっかりと伝わっているはずだ。
そこで南野が誰の後継者なのか考えてみる。今のところクロップは明言を避けているが、プレースタイル、適正からしてフィルミーノの位置だと見るのが妥当だろう。
ということは、日本代表アタッカーがリバプールで定位置をつかむためには、あの天才的なブラジル人の“偽9番”を追い越さなければならない。
無論、南野にはその素質がある。フィルミーノを抜く可能性が全くない選手を補強するほど、クロップはお人好しではない。ただし、ドイツ人闘将が何度も口を酸っぱくして言うように、それには時間がかかる。
問題は南野に、どれだけの時間が必要かということだ。
もちろん、フットボールの世界は明日何が起こっても不思議ではない。不慮の怪我や突然の移籍。しかし過去3シーズンを振り返ってみても、あの3人にそうしたことが起こるとは考えづらい。
フィルミーノは3人のうち若干年上で、今年の10月2日で29歳になる。しかし最近ではトレーニングの近代化が進み、食事を含めた日常生活の管理も厳格で、選手が30歳を境にして急激に衰えるということはなくなった。29歳はまだまだ絶頂期のど真ん中。今季に続いて、来季もフィルミーノがリバプールの3トップの一角として絶対的な存在でいることは疑いようがない。
その間、南野はCL、国内カップ戦、また過密日程期でのローテーション起用で確実に自分の存在感を示さなければならない。技術面の成長はもちろんだが、この間、チームメートとの人間関係もしっかりと構築しなければならない。
結局はここが最大の難関だろう。同年代で3年間厳しい戦いを勝ち抜き、ともに世界のトップレベルに立った3選手の域に達することだけでも至難の業なのに、新しい国で、しかもまだおぼつかない英語を使って、人間関係でもあの3人に並ばなければならないのだ。南野が“フィルミーノの代役”として、サラーとマネから同等の信頼を勝ち取るにはどれだけのプレーと時間が必要だろうか。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。