南野拓実が挑むリバプール“最強3トップ”の牙城 チャンスは「早くて再来年」の理由
同年代の3人、3年間を過ごし評価額は揃って1億ポンド超え
さらには前半29分と同アディショナルタイム2分に、南野はボックスの外から相手DFの虚をつくかのように右足を鋭く振って、オンターゲットシュートを2本打った。
特に1本目のミドルは「よし決まった」と思わせる素晴らしいシュートだったが、相手GKのスーパーセーブで惜しくも今季初ゴールは夢と消えた。けれども、どこからでも隙があればゴールが狙えるシュートセンスを南野が見せて、その才能の輪郭を明らかにした。これでもう試用期間は終わった。チームにもしっかり溶け込んでいる。そんな印象を与えたプレーだった。
ところが、だ。後半19分にクロップが控えの3トップに代えて、レギュラー3人を同時に送り込むと、あの3人とこの日先発した控え3人との間には、到底埋まらない圧倒的な差があることに愕然とした。
モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネの3トップのどこが凄いかという話は、それだけで一つのコラムとなってしまうので、ここでは割愛させていただくが、この試合で筆者の目の前で繰り広げられたあの3人の圧倒的なパワー、スピード、決定力からすると「今のチームは3シーズン一緒に戦ったメンバーで構成されている。特に3トップの3人はお互いのプレーを理解している」とだけ語ったクロップのコメントは、あまりにも控えめだ。
この3人は過去3シーズンを一緒に戦い、CL決勝敗退、翌年のプレミア勝ち点「1」差の2位、そして準決勝での奇跡の逆転劇を経て欧州を制し、さらには今季、リバプールを30年ぶりにイングランド王者に導く原動力となった。
修羅場も栄光もともにくぐり抜けてきた3人だ。そして奇しくも同年代の3人が一緒になったのが、24歳の時。そこからサッカー選手として成長期から全盛期に向かう貴重な3年間を、激しい試合の連続の中でともに過ごした。
しかもチームを率いるのが、卓越したカリスマ性を持ち、必殺戦術カウンタープレスを駆使するクロップ監督である。闘将と呼ぶにふさわしいアクションで熱狂的なリバプールサポーターも鼓舞し、一丸とし、現場、経営、サポーターを一枚岩にする状況を生み出して、選手が常に全力を尽くさなければならない環境も作った。
こうして1人の才気溢れる監督の下、リバプールというクラブそのものの成長とともに揉まれ、3年前には3000万~4000万ポンド(約42億円~56億円)級の選手だった3人が、現在は揃って1億ポンド(約139億円)を超える存在になった。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。