南野拓実が挑むリバプール“最強3トップ”の牙城 チャンスは「早くて再来年」の理由
クロップも明言「このチームであの3人の域に達するには、誰だって時間がかかる」
昨秋、オーストリアのザルツブルクにいた南野は、CLでリバプールと直接対決を果たし、アンフィールドで1ゴール1アシストを記録。思わぬ接戦に持ち込まれて肝を冷やしたレッズサポーターに、鮮烈な印象を残した。あの時の鋭く危険なイメージそのままに鳴り物入りで加入しただけに、1月の途中加入とはいえゴールに絡めなかったのは、日本代表アタッカーにとっては残念至極だったに違いない。
しかし、個人的には無観客のアンフィールドで優勝セレモニーをしなければならなかった無念と同じく、南野には今季ゴールに絡めなかった虚しさ、悔しさを来季に晴らしてもらえればいいと思う。
その思いはユルゲン・クロップも同じだ。
「いや、全くがっかりなんてしていない。このチームに加入してもらったこと自体、大きな要求だ。今のチームは3シーズン一緒に戦ったメンバーで構成されている。特に3トップの3人はお互いのプレーを理解している。このチームであの3人の域に達するには、誰だって時間がかかるものなんだ」
7月26日に行われたリバプールのリーグ最終節はニューカッスルで行われたこともあり、武藤嘉紀の移籍以来、懇意にしている広報官が筆者ともう1人だけ、日本人記者を特別に取材リストに加えてくれた。
といっても、このクロップの会見は今時の常識となったZOOM(Web会議アプリ)で行われ、その点では現地に来た意味はあまりなかったが、南野が先発したリーグ最終戦を肉眼で見られたのは大きかった。
この試合、クロップは右からアレックス・オックスレイド=チェンバレン、ディボック・オリギ、そして南野と控え組の3人を先発起用した。
後半19分までのプレーだったが、正直、ここまで南野が成長しているとは思わなかった。
どうせならオリギを左で起用して、南野を得意の中央で使って欲しいと思った。ところが、リバプールのウインガーが見せる縦にドリブルで抜ける能力に少々物足りない印象がある日本代表アタッカーにとって、見せ場が作りづらいと思った左サイドで、ライン間のスペースを上手く使い、ワンタッチパスを多用して流れを作り、しっかりと存在感を示した。
しかもリバプールのアタッカーらしく、豊富な運動量で再三中央に切り込み、ゴール前に侵入した。
またフィジカルな展開に持ち込もうとするニューカッスルに対しても当たりの弱さを見せず、プレースピードで凌駕して、わずか半年間でプレミア戦士として十分通用する選手になっていた。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。