横浜FM、“飛車角落ち”の一戦で痛感 波に乗れないJ1王者を象徴した“一つのミス”

柏レイソル戦で同点ゴールを決めたFWオナイウ阿道【写真:高橋 学】
柏レイソル戦で同点ゴールを決めたFWオナイウ阿道【写真:高橋 学】

スタイルを貫いて同点に追いつくも勝ち切れず

 それでも後半33分の同点ゴールは、序盤から相手をポゼッションで押し込んだことが伏線となっていた。途中出場のFWオナイウ阿道が、天野とのパス交換から素早く右足を振り抜く。華麗なパス回しではなく強引とも思える中央突破で、オナイウの意表を突くタイミングでのシュートがゴールネットを揺らした。

 試合はそのまま痛み分けに。横浜FMとしてはスタイルを貫いたうえで同点に追いついたものの、勝ち点3を奪うための決定打を欠いた。それは柏も同じで、オルンガという特異な存在を生かした戦略で先制に成功したまでは狙い通りだったが、勝ち切るには1点では足りなかった。

 冒頭でも触れたように、横浜FMは仲川とチアゴ・マルチンスという攻守の両輪を欠いていた。仮に仲川がピッチにいれば、押し込んだ状態でさらにギアが上がったかもしれない。チアゴ・マルチンスが健在ならば、オルンガの脅威も半減しただろう。勝負の世界に“たられば”は禁物とはいえ、替えの利かない主力クラスの存在の大きさを痛感する真夏の夜となった。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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