横浜FM、“飛車角落ち”の一戦で痛感 波に乗れないJ1王者を象徴した“一つのミス”

横浜F・マリノスはチームのスタイルを貫くも勝ちきれず【写真:Getty Images】
横浜F・マリノスはチームのスタイルを貫くも勝ちきれず【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】仲川とチアゴ・マルチンスが負傷欠場、柏相手に1-1ドロー

 前年度チャンピオンの横浜F・マリノスが、4連勝中と勢いに乗る柏レイソルを日産スタジアムで迎え撃った。

 この試合、横浜FMは昨季MVP&得点王のFW仲川輝人と、圧倒的なスプリント能力でハイラインディフェンスを支えるDFチアゴ・マルチンスを負傷で欠いた。いわゆる“飛車角落ち”の感は否めず、主力クラスの相次ぐ負傷離脱は、ここまで3勝1分4敗の11位となかなか波に乗り切れない要因にもなっていた。

 対する柏は、前節まで4試合連続得点中で目下のところ得点ランキング独走中のFWオルンガを擁する。横浜FM守備陣が、このケニア人ストライカーの圧倒的なパワーと長いストライドを生かしたスピードに手を焼くことは容易に想像できた。

 アンジェ・ポステコグルー監督が「相手どうこうは関係ない。自分たちのサッカーをやるだけ」と繰り返した通り、横浜FMはキックオフと同時にハイラインをキープ。最終ラインがハーフウェーライン付近に達することも珍しくなく、ボールロストしてもすぐに奪い返せるように高い位置で全体をコンパクトに保っていた。

 得意のポゼッションでゲームを支配した横浜FMは、相手を押し込んだ状態から先制点を狙う。前半23分にはMF天野純が鋭いターンから強烈なシュートを放った。一方、ネルシーニョ監督率いる柏が狙ったのは横浜FM陣内に広がるスペースで、特に両サイドバックの背後を突いてチャンスを作っていく。実際に開始直後の6分にはオルンガが単独で抜け出し、惜しいシュートを放った。

 序盤から互いの色が鮮明に映し出された試合は、横浜FMが犯した一つのミスによって動く。後半17分、柏陣内から放り込まれたアバウトなボールに対応したのはDF松原健だったが、戻りながらバックパスを選択したプレーがまさかのキックミスに。次の瞬間、猛追するオルンガに奪われ、そのまま5試合連続となる今季10ゴール目を献上してしまった。

 本職はサイドバックの松原だが、チームの台所事情を鑑みて前節のベガルタ仙台戦からセンターバックで起用されていた。慣れないポジションの影響か、あるいはオルンガから見えない圧力を感じ取ったのか、いずれにしても拮抗した試合での大きなミスが致命傷となり、試合が動いた。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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