なぜJFAアカデミーからスペインへ? 19歳MF十川ゆきが突き進む“オンリーワンの道”
スペイン挑戦1年目はスルーパスにこだわり、2部で21試合2ゴール7アシストを記録
18歳にしてオビエドとプロ契約を結び、異国の地でプレーすることになった十川。スペインサッカーと言えば、男子1部リーガ・エスパニョーラに代表されるようにテクニックに優れたイメージが強いが、上手さ以上にフィジカルと球際の強さが印象に残ったと語る。
「行って2日目に驚く出来事がありました。相手役をしていたチームメートに後ろから足を狩られる形になって、アキレス腱付近が切れて出血したんですけど、正直日本の練習ではそんなことはありえない。そのワンプレーで、スペインは全然違うし、この激しさのなかで戦わないといけないと感じました。しかも試合になったらさらに削りに行くし、監督からも『ファウルでOKだからとりあえず止めろ』と言われます。相手を止められなかったら、その選手は役割を果たせていないとみなされて悪い評価になってしまうんです。球際の激しさに慣れるには、3カ月くらい時間がかかりました」
開幕当初、左サイドハーフを任された十川は、身長157センチ・体重およそ50キロ。身長180センチ以上の選手も数多くいるスペインリーグにおいては小柄な部類で、「フィジカル面で不利というのは間違いないです」と認める。ただ、そのハンデを決してネガティブに捉えず、熾烈な競争で生き残るためには自分が何で勝負すべきなのかを考え抜いた。
「私はフィジカル的にはまったく優れていないし、足もあまり速くありません。日本にいた時はフィジカル強化にエネルギーを割いているところはあったんですが、スペインでは相手と身長20センチ、体重20キロくらい違うこともざらなので、コンタクトすると物理的に100%負けてしまう。逆に、マークをかいくぐっていくプレーは通用するし、フリーでボールを受けてターンまで持っていければ、自分の持ち味がスムーズに出せる。だから、(体を)当たらないようにする術だったり、サイドならどれだけフリーの状態で受けられるかのポジショニングで勝負するようにしました」
左サイドハーフでスタートし、シーズン途中に監督交代となった後はトップ下、右ウイングと起用ポジションが変更。新型コロナウイルスの影響で5月6日にシーズンが打ち切りとなったなかで、スペイン挑戦1年目は2部リーグで21試合2ゴール7アシストを記録し、武器であるスルーパスを徹底的に磨いた。そこには、「オンリーワンの技を持っていたい」という十川なりのポリシーがある。
「日本にいる時はロングシュート・ミドルシュートも武器だと思っていたなかで、今シーズンはパスに特化というか、自分のブランディング的に『十川ゆき=ラストパス』とより分かりやすくなるようなプレーを意識していました。もちろんオールマイティーさも大事な要素ですけど、システムや戦術にはめ込む時に、リオネル・メッシ&クリスティアーノ・ロナウド=ゴール、シャビ=スルーパス、アンドレス・イニエスタ=ゲームメーク&テクニックみたいに飛び抜けた特長があったほうが監督もイメージできるし、評価されやすくなります。私もシャビのように、ボールを預けておけば点を取れるパスを出してくれると信頼してもらえる選手になりたいです」