なぜJFAアカデミーからスペインへ? 19歳MF十川ゆきが突き進む“オンリーワンの道”
5歳でサッカーを始めた十川ゆき、バルセロナと名手シャビに魅了されてスペインに憧れる
近年、欧州リーグでプレーする日本人女子選手が増えつつある。そのなかで、JFAアカデミー福島からなでしこリーグを経由せずにスペインへ渡り、トライアウトでプロ契約を勝ち獲った“異色な存在”が19歳のMF十川ゆき(レアル・オビエド)だ。「世界で一番楽しい大会に出たい」――。大きな野望を胸に、自分の直感を信じてオンリーワンの道を切り開いてきたゲームメーカーの挑戦に迫る。
大阪府出身の十川は、2人の兄がサッカーをしていたこともあり、5歳の時に自然とサッカーを始めた。地元の男子チーム「STAYCOOL FC」(現FC GRASION)と、女子チーム「大阪COSMO」を掛け持ちしながら練習に励むなか、幼心にスペインに憧れを持つ出来事があったという。
「STAYCOOL FCの恩師である岡亮太コーチがスペインリーグ好きだったんです。小学生ながら戦術も練習に取り入れていて、『これくらいできるようになろう』とバルセロナの映像を見せてくれました。綺麗にパスをつないで相手を崩していくサッカーを目指してやっていたので、すぐに好きになりました。あの環境は大きかったですね」
小学校時代は最前線のFWでプレーしていた十川だが、実際の役割はトップ下色の強いチャンスメーカー。「一番好きな選手はシャビ」と言うように、バルセロナで世界最高峰のパサーとして鳴らした元スペイン代表MFシャビ(現アル・サッド監督)のプレースタイルに魅了され、スルーパスやアシストに喜びを覚えていった。
その後、200人中5人しか合格できない選考試験を通過し、日本サッカー協会(JFA)が運営する“エリート養成機関”「JFAアカデミー福島」に8期生として入校。中学・高校の6年間、世界のトップ10を目指すシステムのもとで技術を徹底的に叩き込まれた。十川にとって一つの転機となったのは、中学2年の時に出会ったスペイン人監督だった。
「中学2年生の時にフランというスペイン人の監督がアカデミーの男子を指導に来ていて、女子も半年間くらい見てくれたんです。もちろんアカデミーのスタッフの方も優秀なんですけど、練習メニューやサッカー理論、ミーティングの内容、監督が発する言葉は、私にとって新鮮だった。トレーニングにもルールが設けられていて、周りを見るために首を振る回数が自然と増えたり、今までにない戦術を教えてくれたり、『サッカーってこんなに面白いんだ』『もっと深く知りたい』と衝撃を受けました。それがきっかけで、『スペインへ行きたい』と漠然と思うようになりました」