大迫敬介の“攻撃的守備”が復活 スタメン落ちの3試合で刻んだ「GK王国」広島の伝統
偉大な守護神が示した“伝統” 「先輩たちの行動を自分が表現すれば良かった」
後半、横浜FCが遮二無二ハイボールを入れてくる。41分、43分、45分。精度の高いボールが入ってきたが、そのすべてを大迫はキャッチし攻撃を終わらせた。ここでさらに確信できた。大迫のストロングポイントが戻ってきたことを。
「大分戦の後で自分が外されることは、覚悟していました」
大迫は真摯に語った。
「でも、腐ることはなかった」
この言葉は綺麗ごとではない。
「僕が試合に出ていた時、(林)卓人さんやマス(増田)くん、(廣永)遼太郎くんが、何を示してくれていたか、僕は知っていた。だから自分が試合に出られない立場になった時に、先輩たちの行動を自分が表現すれば良かったから」
大迫が自分を取り戻した。それだけで、3試合のベンチスタートの価値はある。
試合前のトレーニングに入る直前、林は大迫の肩をポンポンと叩いて、ピッチに出た。そして試合後、完封勝利に貢献した若者に対し、偉大なる先輩がグータッチで祝福した。
広島はGK王国。背番号1を背負った4人に大迫も加え、5人もの日本代表GKを輩出している。ただ、広島に入っただけで伝統を受け継ぐことはできない。そこで何を見て、何を感じて、そのうえで何をやってきたか。19年前、ルーキーの林が下田崇から感じたことを実践してきたように、今、大迫は林からあらゆることを感じて、自身の血肉にしようともがいている。
それが、伝統を受け継ぐということだ。
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(中野和也 / Kazuya Nakano)