伊東純也の“異質なスピード”にベルギー人も驚愕 欧州3季目、ヘンクで放つ圧倒的な存在感
負傷で序盤戦は欠場の見込みも…今の地位が揺らぐことはない
それでもシーズン開幕から2カ月あまりが経過した頃には、伊東は指揮官からの要求と自分の持ち味との間で折り合いをつけることに成功していた。
例えば、昨年10月10日に行われたワールドカップ・アジア2次予選のモンゴル戦(6-0)で、伊東は前半22分に右ハーフスペースから相手のディフェンスラインの背後に抜けて右サイドバックのDF酒井宏樹からのパスを引き出し、そこからクロスボールを上げてMF南野拓実のゴールをアシストしているが、あのような同サイドのサイドバックがボールを持った時にハーフスペースから相手の背後へ果敢に飛び出していくのは、昨季の伊東を代表するプレーの一つだった。
また、年が明けてからは展開に応じてピッチ中央や左サイドまで流れてボールを引き出したり、ゴール前に詰めて以前よりも積極的に点を狙いに行くようにもなった。本来の強みを消すことなく、現代サッカーでサイドハーフに求められているポジショニングにも適応できることを示せたのは、日本代表での定位置争いや今後のキャリアを考えると、大きな意味を持ってくるかもしれない。
新シーズンの開幕が約2週間後に迫った7月26日、ベルギー地元紙「Het Belag van Limburg」は、腰の筋肉の負傷によって伊東が9日のズルテ・ワレヘムとのリーグ開幕戦は欠場する見込みだと伝えた。1日に行われたRCランス(フランス)との開幕前最後のテストマッチでメンバー入りしていなかったことからも、報道のとおり開幕戦でのプレーは難しそうだ。
しかし、昨季エールディビジで15点をマークしたFWシリル・デセルスをヘラクレス(オランダ)から引き抜くなど、ヘンクもシーズン開幕に向けて新戦力の補強を進めているが、サイドアタッカーに関してはまだ1人も獲得していない。伊東の昨季の働きぶりを考え合わせると、開幕からの数試合を欠場したとしても、今の地位が揺らぐことはないだろう。1年間フル稼働できれば“二桁得点・二桁アシスト”も十分に狙えるはず。今は怪我を早期に治し、復帰後にまたベルギー人の度肝を抜くようなプレーを見せてくれることを期待したい。
(土佐堅志 / Kenji Tosa)