逆境で問われる”スピルバーグ佐々木”の手腕 なでしこの新たな主役を発掘し、五輪へ導けるか

「選手自身がチームとして志を持っている」

 3点を奪ったオーストラリアは、まさに3回のチャンスを全て決めたというゲームになった。しかし、一方でなでしこに数多くの決定機があったかというと、疑問が残る。ビハインドを背負ったことで、オーストラリアにゴール前を固められてしまった難しさがあったにせよ、ペナルティーエリアの中でのシュートはほとんど打てていない。宮間や中島はミドルレンジから決める能力のある選手だが、距離のあるシュートが何度も得点になるかと言えば、それは無理があるだろう。2失点目は主審にパスが当たったところからのカウンターという不運ではあるが、全体的な攻撃の質という点でもオーストラリアに軍配が上がった試合だった。

 そうしたなかでの光明は、FW横山久美がスムーズにチームに入り込めたことだ。前半40分の段階で、佐々木監督は実績のあるFW大野忍を諦め、新戦力の横山を投入した。指揮官はこの決断について「大野選手はバランスを取ることができる選手。ゴールを割るという確率では、横山選手や岩渕選手の方が決定力はあると感じている。トータルでは大野選手。先制されたことで前半、相手のDFが疲れたなかで仕掛けが機能するんじゃないかということで、メンバー交代が早めになった」と話している。

 最前線のFWの人選までバランスを重視したという言葉からも、この初戦に対してかなり慎重に入っていたことが感じ取れる。結果的に残り少ない前半の時間帯で1点を返し、追い上げムードでハーフタイムを迎えた。そして後半20分くらいまで押し込み猛攻を仕掛けた場面で、日本に最後の部分での精度があれば、試合は引っくり返ったかもしれない。しかし、現実はそうはならなかった。

「澤選手が引退してベンチにいなかったが、選手自身がチームとして志を持って、(新たな)チームにしようと言っている。この近くのエリアにいたと思いますが、パワーも送ってくれたと思う。結果として初戦勝つことができなくて、申し訳ない。澤さんだけじゃなく、日本の皆さん全体に謝りたい。」

 

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