Jリーグに“ギフティング”は定着するのか? コロナ禍で急浮上した“投げ銭文化”の可能性
定着の鍵は“コミュニケーション”にあり
「エンゲートではファンの方々から届いたコメントに、選手がスマホで簡単に返信できるようなツールを用意しています。自分宛てのギフティングが来たらスマホに通知が来るようになっていて、自分にどれだけのギフティングが来ているかも確認できますし、たくさんのギフティングをしてくれているユーザーさんのニックネームまで把握できるようになっています。それらを通じて、選手がファンと向き合うことが可能になります」
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これまで熱心なファンがチケットやグッズを買ってクラブを応援しても、選手から直にリアクションが届くことはなかった。しかし、デジタル上で完結するこの仕組みは、あらゆるものを“見える化”する。選手にはファンがチームに貢献してくれていることがひと目で伝わり、一方のファンには選手からのお礼が直に届く。この双方向的なコミュニケーションこそが、エンゲートがもたらす最大の価値となる。
少し平たく言えば、“推し”の選手に「ナイスプレー」と声をかけて「ありがとう」と返事が返ってくる。それが嬉しくないファンなどいないだろう。そういった関係性を、サービスを通じて作ることができるのもエンゲートの特徴だ。
コロナ禍で打撃を受けたクラブにファンが支援を行うだけなら、すでにクラウドファンディングなどの既存のサービスが存在していた。実際にJリーグでも複数のクラブが自粛期間にクラウドファンディングを立ち上げ、資金調達に成功している。
そうしたなかで、ギフティングという形が存在する価値とは何か。エンゲートによれば、それはモノではなくコミュニケーションを通じた「共感」が生み出す循環となる。城戸氏は「双方向的なコミュニケーションがなければサービスは成り立たないなと思った」とも話している。選手とファンの距離感がより近くなれることがエンゲートならではの大きな強みでもあり、同時にギフティングが一過性のもので終わらないためには欠かせない重要な要素だったという。
「今、世界が共感経済、共有経済と言われているなかで、自分が感動したものにギフティングを通じて共感を表現する。スポーツはまさに誰かを感動させる力がある、世界最大のエンターテインメントコンテンツ。そんなスポーツの世界に、共感経済の波が来ないわけがないと考えていました」
城戸氏は成功の確信を持っていると、力強く言葉を発した。
実際にエンゲートでは、バスケットボールのBリーグ所属のある選手が1回の配信で約20万円、同月内の1カ月間に計40万円相当のギフティングを受けた例もあるという。ギフティングに大きな可能性があることを、はっきりと示した事例と言えるだろう。もちろん、これは選手がファンとしっかり向き合い、積極的なコミュニケーションを取った結果であることは留意しなければいけないポイントだ。