なでしこ天真爛漫アタッカー、16歳で頭をよぎった「引退」と前十字靱帯断裂からの復活劇

前十字靱帯断裂で夢だった選手権出場が叶わず…18歳の少女にはあまりに酷すぎた現実

 作陽高は2013年11月、エース三谷不在のなかで選手権の中国地域予選会を2位で通過し、全国大会出場の切符を獲得。12月には壮行会が行われたが、三谷は壇上に立つチームメートの姿を見ていて気持ちを抑えられず、1人会場を後にした。当時の心境を「最後、自分の年でゴピさんに良い終わり方をプレゼントしたいという思いが誰よりも強かったので、みんなを見送る壮行会で自分は逃げ出してしまいました」と明かす。

 一方で、池田監督も三谷の苦しい胸の内は察していたという。

「ずっと沙也加に9番を背負わせていたので、自分が背番号はもらえないと分かっていながらも、9番(をつける選手)の名前が発表された時の彼女の表情とか、壮行会の時の思いはひしひしと感じていました。選手権に出るべき選手でもあるし、自分にとってサッカーがどれだけ大事か分かって、息を吹き返したタイミング。9番をもらえず、選手権にも出られないという現実は高校3年生の彼女にはあまりに重すぎた。誰が見ても涙するくらいの重荷だったので、何をしても私は受け入れてあげたいと思っていました」

 三谷にとって唯一の救いだったのは、国体直前に練習参加していた浦和レッズレディースが、大怪我を負った状態でも獲得の意思を示してくれたこと。池田監督も「彼女の将来はなんとかつなぎ止められました」と話す。

「怪我している状態でもとレッズが引っ張ってくれて、沙也加もいろんな思いがあったであろうなかで頑張れた。たしかに彼女は(壮行会で)逃げる行動はしたかもしれないけど、サッカーから一回でも逃げたとは私は思っていません。プレーできない状況が長くても続けられたのは、周りの人に支えられる彼女の愛嬌というか人の良さ。人間の強みをしっかり持っている子だと思います」

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング