ロナウジーニョに中村俊輔… 女子サッカー漫画『さよなら私のクラマー』で描かれる名場面
悲劇のヒーロー、R・バッジョの名シーンも登場
――作中に登場するシーンは最近のものよりも、少し前の1990年代や2000年代のものが多いように感じます。それはあえてそういうチョイスをされているのですか?
「僕は元イタリア代表のロベルト・バッジョが一番好きな選手で、1994年のアメリカ・ワールドカップ(W杯)の頃が特に一生懸命サッカーを見ていた時期というのも、関係があるかもしれないです。
それから、たとえばリオネル・メッシは常に凄い選手で、難しいことを当たり前のようにやってのけてしまいますが、漫画で描く時にはもっと華やかなロナウジーニョや(ジネディーヌ・)ジダンのような選手のほうが分かりやすいだろうなと思ったんです。最近はサッカーが戦術的に高度になってきたというのも、関係があるかもしれません。
メッシやクリスティアーノ・ロナウドはあらゆる面で優れていますけど、満遍なく凄いので“これぞ”というシーンを挙げるのが難しい。個人的に強いて挙げるとすれば、チャンピオンズリーグでメッシが決めたヘディング(2008-09シーズン決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦)かなあ。今の選手は本当に万能ですよね」
――バッジョといえば、インタビュー前編では「ファンタジスタが好き」ということを話していましたね。作中では蕨青南高校が最初に対戦する久乃木学園高校に井藤春名(いとう・はるな)という“これぞファンタジスタ”な選手がいます。
「井藤はまさにそのバッジョと、元日本代表の中村俊輔をモデルにした選手です。彼女は左利きで、久乃木学園は神奈川県の学校ですしね。中村俊輔はまさにファンタジスタだと思っています。最近は彼のようなタイプの選手は少なくなってますけど、やっぱりロマンを感じます」
――バッジョが94年アメリカW杯のブラジル戦でPKを失敗したあの名シーンも出てきます(47話/コミックス12巻)。ワラビーズの恩田希(おんだ・のぞみ)がPKキッカーを務めました。
「あのシーンはバッジョの映像を見て、そのまま描きました。でも、想像で描いて実際とは結構違ったというシーンもたくさんあります(笑)。
たとえば、千葉県の栄泉船橋高校との試合で、蕨青南の曽志崎緑(そしざき・みどり)が決めた1点目のシュート(28話/8巻)は元バルセロナのシャビ・エルナンデスのゴールなんです。レアル・マドリードとのエル・クラシコ(2010-11シーズン第13節/5-0)でアンドレス・イニエスタが左から斜めの鋭いパスを入れて、シャビがGKの目の前でポンと浮き球のシュートを決めたゴール。僕はそのゴールがすごく好きで完璧に真似たつもりだったんですけど、後から動画を見たら作中のカットとは全然違いました(笑)。シャビがトラップしたボールが高く浮いたと思っていたんですけど、実際はディフェンスに当たっていたんですよね」