久保建英の“成長”をマジョルカ地元記者2人が分析 「数年後、欧州で重要な選手の1人に」

マジョルカMF久保建英【写真:AP】
マジョルカMF久保建英【写真:AP】

【スペイン発コラム】久保の1年を見続けた2人の地元紙記者、共通した認識と異なるニュアンス

 スペインのトップリーグでデビューした1年は、日本代表MF久保建英にとってどんなシーズンだったのか、そして日本人選手はマジョルカに何を残したのか――。現地で長くマジョルカ担当を務める地元紙の記者2人が分析した。

 久保の今季を象徴する言葉を「Progresión(進展)」としたのは、「ディアリオ・デ・マジョルカ」のセバスティア・アドロベール記者。これに対し「ウルティマ・オラ」のカルロス・ロマン記者が選んだのは、「Evolución(進化)」だった。ほとんどの場合、二つの単語は入れ替えて使っても問題ないほどで、両者の見解が一致しているのが見て取れる。

 2人の間でニュアンスが多少違うのは、久保の成長についての認識だ。一方は選手としてすでにでき上がっていた素地がマジョルカで磨かれたとするが、他方はトッププロとして一から学ぶ場になったと見ている。

 ロマン記者は「久保はレアル・マドリードでのプレシーズンで、すでに対戦相手の選手に対し挑戦的に大胆なプレーを見せていた。マジョルカに来た当初は馴染むのに時間を必要としたが、その才能や積極的な姿勢でチームを引っ張るまでになった」と言う。対してアドロベール記者は「彼はここで少年から大人の男になった。マジョルカを学習の場とし、そのパーソナリティーとチームに圧倒的に欠けていたプレーの創造性を提供することで、攻撃陣の象徴的な存在になった」と分析している。

 この認識の違いは、マジョルカが久保に何を与えたのか、久保がマジョルカに何をもたらしたのか、という問いに対する答えにも反映された。

 ロマン記者は「マジョルカは、選手に1部での多くの試合経験をもたらした。それに対し久保はベテラン選手もいるなか、特に攻撃面でチームを引っ張り、終盤になって降格の恐れが迫る厳しい展開のなかで逃げ隠れせず戦い続けた」と、久保が責任を全うしたことでチームとギブ・アンド・テイクの関係を作ったと見ている。

 これに対し、選手としての本質的な変化を垣間見たと考えているアドロベール記者からすれば、足もとを揺るがしかねない状況からの劇的な成長は、久保が与えられた以上のものをマジョルカに恩返ししたと言えそうだ。

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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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