カズ、俊輔ら“ビッグネーム”依存からの脱却へ 横浜FC、0-4大敗に見えた変革への挑戦

昇格1年目の今季、横浜FCは“ビッグネーム”に頼らないメンバーでJ1に挑んでいる【写真:高橋学】
昇格1年目の今季、横浜FCは“ビッグネーム”に頼らないメンバーでJ1に挑んでいる【写真:高橋学】

【識者コラム】横浜FMに0-4大敗、下平監督は才能豊かな若手とベテランの融合を追求

 横浜FCがJ1王者の洗礼を浴びた。

 一昨年まで連覇達成の川崎フロンターレ(1-5)、さらには昨年の覇者横浜F・マリノス(0-4)と、いずれも4点差で完敗した。だがそれでも希望が仄見えたのは、下平隆宏監督が果敢に勝利に挑んだからだ。さらに言えば、同監督が就任してからのクラブは、カズ(三浦知良)を筆頭とするビッグネームの話題性に依拠する体質から脱却し、純粋にチーム力の向上を追求し始めている。

 その結果、おそらく横浜FMとのダービーマッチのピッチには、過去の実績にかかわらず指揮官が見極めたベストメンバーがピッチに立った。スタメン平均年齢は、守護神で40歳の南雄太を除けば25.2歳。将来性豊かな若いタレントとベテランを融合させたイメージで、特に前線とサイドにはスピードやパワーを備えた選手を配し、「果敢にマンツーマンで嵌めに行き」(下平監督)序盤は主導権を握った。開始14分には斉藤 光毅のシュートがバーをかすめたので、もしこれが決まっていれば、もう少し横浜FMの焦りを誘発できたに違いない。

 しかし当然ながら、昨年のJ1王者とJ2準優勝の間には明確な質の違いがあった。

 前節の川崎戦でも残り15分までは1-1と食い下がりながら、そこから4失点を喫したわけだが、ダービーでも「いったん気持ちが落ちると回復できない」(下平監督)弱点を露呈。中盤の攻防では「いい形で奪えればチャンスになるし、入れ替わられればピンチになる」のを承知で果敢さを表現したが、指揮官は「プランはあったが遂行する能力が足りなかった」と振り返る。横浜FMの3枚(マルコス・ジュニオール、喜田拓也、仙頭啓矢)のMFとは精度の違いが浮き彫りになり、序盤は効果的だったサイドからの崩しも、終わってみれば結果に繋げたのは前年王者のほうだった。

 もっとも横浜FCにも、格の違う手札があった。残り15分で交代出場した中村俊輔は長めのキックを3度試みただけだが、サイドチェンジ、スルーパス、それにCKと、申し分のない質を見せつけた。いずれもフリーの状態なので当然ではあるが、スタメンFWと組み合わせればさらに可能性が広がりそうだ。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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