「サッカー人生の全てを変えるきっかけになった」 天才・宇佐美貴史を覚醒させた言葉とは
リベリーの言う「エゴイスト」の真意
「エゴイストって点さえ取れればいいやんって感じで捉えられているけど、そうじゃない。エゴイストというのは俺が勝利に導きたい。俺のゴールで勝たせたいとか、そういう強い気持ちを持っている選手がエゴイストなんです。ロッベン、リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドとかはそうやけど、それができるってものすごい能力がないと無理。それに自分で決めるだけじゃなく、GKと1対1になってフリーの味方がいて、そっちが決める確率が高いと、リベリーはポンとパスを出す。マリオ・ゴメスは何点それで助けられたことか。実はそういうパスを出せる選手が一番点を取って、一番給料をもらえて、一番観客を集められて、一番影響力がある選手になれる。だから、リベリーは自分に言ってくれたんやと思う。おまえは自分でアクションを起こして、自分のゴールでチームを勝たせられるエゴイストになれって。そういうこだわりというか姿勢がないとリベリーみたいなスター選手にはなれない」
ドイツから帰還して2年半になる。新境地を開き、野心のつぼみも膨らんだ。得点王になってG大阪に多くのタイトルをもたらした後、もう一度海外でリベンジする。まだ23歳、再挑戦するにはちょうどいい年齢だ。
「ドイツに19歳で行けたのはベストのタイミングだった。そのままずっとドイツにいるのが理想だったけど、21歳でいい意味で諦めて戻って来た。そして、ガンバでいろんな経験をして、もう一度、自分をつくり直すことができた。だから、あの時、ドイツに行ってほんまに良かったと思う。そう振り返ることができるのは今があるからやし、あの2年間があったからこそ今の自分がある。サッカー人生の全てを変えるきっかけになりました」
そう言うと一瞬、間を空けて小さな笑みを浮かべて、続けた。
「でも、ドイツに行ってなかったらどないなってたんやろ。逆にそれ、知りたいですね」
[PROFILE]
宇佐美貴史(うさみ・たかし)
1992年5月6日生まれ、京都府長岡京市出身。地元の長岡京SS時代から「天才少年」と知られ、ガンバ大阪ジュニアユース、ユースを経て、2009年にクラブ史上初となる高校2年次でのトップ昇格、同年トップデビューを果たす。11-12年シーズンにドイツの名門バイエルン・ミュンヘンへ、翌12-13年シーズンはホッフェンハイムへ期限付き移籍。13年6月に、当時J2のガンバ大阪へ復帰、J2優勝・J1昇格に貢献。翌14年シーズンはクラブを国内三冠に導く。日本代表には11年6月に初招集、15年3月に4年越しでの代表デビューを果たす。
【了】
佐藤俊●文 text by Shun Sato
山本雷太●写真 photo by Raita Yamamoto