「サッカー人生の全てを変えるきっかけになった」 天才・宇佐美貴史を覚醒させた言葉とは

覚醒した宇佐美が感じた、あの日と近い感覚

 意を決しての古巣への復帰。そこで与えられたポジションは、以前の主戦場だったサイドではなく、最前線のFWだった。長谷川健太監督は、初練習で宇佐美をそのポジションに置いたのだ。狙いはシュートの巧さと得点能力の高さを引き出すことだった。だが、これが功を奏す。宇佐美は徐々に輝きを取り戻し、ゴールを量産し始めたのである。

「実は、今まで一番サッカーが面白かったのが中2の時なんです。その時は2トップだったけど、自分は1.5列目でどこにいてもいい感じでプレーしていた。今回は、その14歳の時と近い感覚でプレーすることができて、すごく楽しかった。サイドって縦への突破とカットインしてシュートとか、そういう限られた攻撃しかできないけど、FWでトップ下あたりにいると、どこからでもボールが入ってくるし、プレーできる範囲や方向が増える。自分の幅がかなり広がりましたね」

 J2では18試合19得点とほぼ毎試合1点ずつを決め、G大阪のJ2制覇、J1昇格に大きく貢献した。昨年は復帰を果たしたJ1でエースとして三冠を達成。その圧巻のプレーは、ドイツで鬱積した思いと学んだモノを一気に吐き出しているようにも見えた。

 昨シーズンは日本代表にも復帰し、得点王争いも演じてみせた(最終3位)。純然たるストライカーではないが、点取り屋としての能力に磨きが掛かった。

 見聞きした言葉と、実体験が宇佐美の肥やしとなってきた。新たな定位置の参考にしたのも、ドイツ時代に見たある選手だった。

「ドルトムント4-5-1の真ん中をやっていたマルコ・ロイスが印象に残っています。自分のイメージする真ん中の選手って点が取れて、パスを出せて、走れて、ポストになるとかいろんなことをやれる。それを全部こなすんでほんまにすごいなって思ってた。でも、ロイスになろうとは思わなかった。参考にはなるけど自分は自分なんで」

 そう言い切るところに、自分のスタイルへの確固たる自信が読み取れる。宇佐美の理想のポジションはFWの9番、9.5番だ。そこにいることが最も相手に脅威を与え、一番点を取れるという手応えを感じているからだ。そして、ゴールへの意識が高まるごとに、バイエルン時代のチームメートだったリベリーの「エゴイストになれ」という言葉が脳裏で呪文のようにリフレインした。

 

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