“常勝”鹿島に何が起きているのか 史上初「J開幕4連敗」…“ザーゴ流”浸透へ苦難の船出
【J番記者コラム】近年相次ぐ主力の流出、変わりゆく鹿島スタイルと新たな挑戦
由々しき事態に直面している。
2020年のシーズンインからここまで勝利の余韻に浸ったことがなく、よもやの公式戦6連敗。Jリーグに限っていえば、クラブワーストの開幕4連敗を喫してしまった。“常勝”を謳う鹿島アントラーズに、一体、何が起こっているのだろうか。
今季から監督に迎え入れられたアントニオ・カルロス・ザーゴの下、現代サッカーの戦術的トレンドであるポゼッションとトランジション(攻守の切り替え)を軸にした新たなスタイルの構築に取り組んでいる。同監督は母国ブラジルだけではなく、ヨーロッパでの指導経験もあり、現代サッカーの戦術に精通している人物だ。
だからといって、ガチガチの戦術マニアではない。サッカーが行われるのはピッチの上であって、机の上ではない。プレーする選手たちの自主性を促しつつ、時には映像を使って、時には自ら模範を示し、思い描くサッカーの落とし込みに力を注いでいる。
これまでの鹿島といえば4-4-2システムを基調に、サッカーの原理・原則に基づく戦い方を貫いてきた。同じメンバーで、じっくりと時間をかけてコンビネーションを熟成させ、揺るぎない牙城を築き上げていく。その方法論は叩き上げの職人さながらで、質実剛健を地でいくようなチームスタイルでもあった。
だが、時代は大きく変容している。
鹿島でプロのキャリアをスタートさせ、数年後にスタメンを張れるようになり、勝ち方を覚え、優勝の瞬間を味わう。さらに日本代表でのキャリアを積んでいくともなれば、次なる刺激がやはり欲しくなるのだろう。「鹿島の顔」とも言うべき存在はこぞって海外志向を募らせていく。
ここ2、3年を振り返っても柴崎岳(現デポルティボ)、植田直通(セルクル・ブルージュ)、昌子源(トゥールーズ→ガンバ大阪)、鈴木優磨(シント=トロイデン)、安西幸輝(ポルティモネンセ)、安部裕葵(バルセロナB)といった面々が若くしてヨーロッパに新天地を求めた。
「同じメンバーで、じっくりと時間をかけて」
主力の流出が避けられない昨今、こうした長期的な視野に立ったチーム作りが非常に困難になっている。そこで、どんなに選手が入れ替わっても再現性のあるサッカーを可能にすべく、戦術的フォーマットの導入に至った。