初のJリーグ監督を経て描く“夢” 新潟アカデミーを変革、日本の育成の「先を行きたい」

新潟のアカデミーダイレクターとU-18監督を兼任する吉永一明氏【写真提供:アルビレックス新潟】
新潟のアカデミーダイレクターとU-18監督を兼任する吉永一明氏【写真提供:アルビレックス新潟】

【高校、ユース、Jを率いた吉永一明の指導論|最終回】昨季途中から初めてJ2で指揮、昇格を逃し「今でも悔しい」

 2019年4月14日付けで、吉永一明はJ2アルビレックス新潟の監督に就任した。

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 片渕浩一郎監督体制でスタートしたシーズンだったが、9節を終えて3勝3分3敗。J1昇格を急ぐ首脳陣は監督交代の断を下し、アカデミーダイレクターだった吉永を急きょ後任に据えた。

「当然、昇格という結果を残すことが最優先でした。しかし昨年から育成型クラブとしてやっていくという方針を定め、『新潟らしさとは?』を追求し、クラブのフィロソフィーを明確にしながら未来につなげていくシーズンにしていかなければならないという意識もあり、だから引き受けた仕事でした。新潟のアカデミーを見ても、身体のサイズやフィジカル能力よりは、テクニックやインテリジェンスで優れている選手が多い。将来彼らが活きるようなサッカーをしなければいけないとは考えました」

 残念ながらJ1復帰は叶わず、吉永は監督を退任し再びアカデミーダイレクター(U-18監督を兼任)の仕事に戻った。しかし、アカデミー出身で十代の本間至恩や岡本將成が中心的なメンバーとして定着し、前橋育英高校出身の秋山裕紀もプロデビューを果たした。

「結果が伴わず、今でも悔しい気持ちで一杯です。もちろん、もう少し時間が欲しかったという想いもありますが、多少なりとも昨年積み上げてきて今のトップチームにつながるものもあると思います。実際若い選手たちは、若いからという理由で出場したわけではない。これからはアカデミーから継続的に選手を引き上げていけば、やがてはそれがクラブの力になる。未来の結果を後押ししていければ嬉しいですね」

 コロナ禍による自粛中には、新潟のアカデミー育ちで急性白血病から復活を果たした早川史哉を招き、後輩たちへ向けてのZOOMミーティングを開いた。

「彼は早くから北信越では抜けた存在でしたが、それ以上の選手たちがいることも知っていた。そこで中学時代の自分を客観視して、プロになるにはどうすれば良いかを考え続けてきたそうです。今、ウチのアカデミーでは、成長スピードを上げ、17歳でのトップ昇格を目指そうと話し合っています。これだけ大卒のJリーガーが多いのを見ても、どうしても日本の選手たちは遅咲きの傾向が強い。やはり中学年代からのアプローチを考えていかなければ、と話し合っています」

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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