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香川を余剰戦力とした、マンチェスター・Uのパニック補強
ファン・ハールの解任オッズは17倍から4.3倍に
まずは移籍した年にファン・ペルシーが突如としてマンチェスター・Uに加入し、当初は1トップ、トップ下でコンビを組むはずだったルーニーがチーム内ライバルになった。
このため、香川はやむなく4‐2‐3‐1の左サイドでプレーする。ところが2季目の開幕から、ヤヌザイが台頭。香川に惚れ込んだファーガソン監督は勇退し、何かしら自分の色を出したいと必死だったモイーズ監督が好んでこの18歳ウインガーを使ったことで、香川の出番はそれほど多くはなかった1年目との比較でも、目に見えて減った。
そして前述したマタが1月にやって来た。完全なパニック補強だったと思うが、欧州CL出場権確保が難しくなっていたモイーズ監督は、ファンとメディアの批判をかわすため、大物獲得に走らずにはいられなかった。
さらに似たような経緯で、名将ファン・ハールも、移籍金を見れば明らかに相手のいいなりとなったパニック補強でディ・マリアを獲得。その結果、香川は9月1日の英各紙が揃ってその移籍理由を伝えたように、「ファン・ハール監督に余剰戦力と見なされた」のである。
しかしまあ、オランダ人指揮官が「10番の選手が5人も6人もいる」といって、バランスの悪さを嘆いたチームに、またも「中央でもできる」と話し、NO.10のポジション対応もできると示唆したディ・マリアを獲得したのはいかがなものか。
ひとりの選手に100億以上を投入しておいて、ビディッチ、ファーディナンド、エブラが去り、空白となっている最終ラインでリーダーシップを発揮できるDF補強はいまだになし。さらに、SBとボランチができるプレミア未経験のブリントは獲得したが、キャリックをはじめ、故障者続出でボールを奪い返す能力と攻撃的な起点となるパス供給の問題が問われる中盤の底の補強も十分ではない。
つまり、ディ・マリア獲得もチームの本質的な問題解決に結びつくものではなく、マタに続くパニック補強であり、香川はその犠牲になったという見方もできる。
こうした状況の中でマンチェスター・Uは30日のリーグ戦で、アウェイとはいえ、ディ・マリアを緊急先発させた上、今季プレミア昇格組のバーンリーとのリーグ戦を0‐0のスコアレスドローで終えた。
焦って買ったマタとディ・マリアふたりを併用するために急遽3‐1‐4‐2にフォーメーションを変更し、ふたり合わせて170億円のスペイン代表とアルゼンチン代表を中盤中央で並べたが、その結果は散々だったといっていいだろう。
おまけにこの試合で、香川のドルトムント移籍交渉がまさに佳境だった頃、マタがハムストリング(太もも裏)を痛めて途中交代したのも皮肉な話だった。
W杯で見事な手腕を発揮し、監督としては最も評価が高かったファン・ハールだが、リーグ戦3戦未勝利に加え、衝撃的だったリーグ杯戦大敗で、今季中の解任オッズは17倍から4.3倍に急落。チーム再編のために香川放出をはじめ、さらなる破壊を行ってはいるが、英国内ではこのまま壊れっぱなしで終わるという危惧も高まっている。
【了】
森昌利●文 text by Masatoshi Mori