香川を余剰戦力とした、マンチェスター・Uのパニック補強

 

ビッグネームの加入で押し出された格好になった香川

 3トップは右からディ・マリア、ファン・ペルシー、ヤヌザイ。この3人の背後にルーニーを配置。中盤の3枚は3トップ下のルーニーを頂点とした三角形で、ダブルボランチとする。

 ルーニーを1.5列に下げるこのシステムに変更すると、マタの出場機会さえ怪しくなる。となれば香川の出番はなおさら減るはずだ。

 それでなくても、ファン・ハールはディ・マリアについて、「サイドだけではなく、セントラルでもできる」と話し、トップ下でも使う考えを示していた。

 この時点――ディ・マリア入団会見時でリーグ戦2戦1敗1分で勝ち星なし。しかもリーグ杯第2回戦で3部リーグ所属のMKドンズ相手に0-4で敗れるという、歴史的な大敗を喫していた。

 この状況では、100億円使って連れて来た選手を使わないわけにはいかない。そこでファン・ハールはチーム大改造のため大なたをふるった。

 英大衆紙ザ・サンは8月29日付で、ファン・ハール監督が前日28日の昼食後、選手一同に向かい、「来週の頭には別のグループになる。幾人かの選手がやって来る。そして幾人かの選手がここを去ることになる」と宣言したと報じた。

 もちろんこの告知の前に、個々の選手には引導を渡していたはずだ。香川もそのひとり。監督自らの口から「戦力外」と伝えられ、ドルトムント移籍を決断したのである。つまり、リーグ杯戦前までは残留の方向だったということ。急転直下の移籍決断だった。

 ある意味、ファン・ハールのこの扱いは公平だと思う。とくに香川には多くの日本企業スポンサーが付き、マーケティング部門からは「残留」を願う声もあっただろう。しかしファン・ハールはスポンサー欲しさのために、香川の貴重な選手生命を無駄にするような飼い殺しは避けた。

 最終的には今年1月のマタ、そして今回のディ・マリアというビッグネームの加入で押し出された格好になった香川だが、そのマンチェスター・Uでの選手生活は、ビッグクラブ選手の宿命ともいえるチーム内競争の連続だった。

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