“失明危機”から這い上がった31歳DF、1%の可能性に見えた光 「やらないという選択肢はない」

ニュージーランドのハミルトン・ワンダラーズに所属するDF松本光平【写真提供:11aside】
ニュージーランドのハミルトン・ワンダラーズに所属するDF松本光平【写真提供:11aside】

【松本光平インタビュー|第4回】”失明危機”から這い上がったDFの次なる目標

 今、この瞬間、必死に戦い続けている選手がいる。31歳のDF松本光平だ。昨年12月に開催されたFIFAクラブワールドカップ(W杯)に唯一出場した日本人選手。オセアニア王者ヤンゲン・スポール(ニューカレドニア)の一員として出場を果たし、バルセロナのレジェンド、シャビ・エルナンデス監督が率いるアル・サッド(カタール)と対戦した。現在はニュージーランドのハミルトン・ワンダラーズに所属するが、新型コロナウイルスの影響を受けての自粛期間中に不慮の事故に見舞われた。アクシデントにより右目の“失明危機”に陥ったなか、松本が「Football ZONE web」の取材に応じ、悪夢の事故から手術までの状況に加えて、術後の経過、そしてこれからの目標を語った。

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 松本は5月中旬、新型コロナウイルスの影響を受けてニュージーランドの自宅で自主トレーニング中に事故に遭った。ガレージの壁に取り付けたチューブを使って鍛えている時、留め具が外れて右目を直撃。左目にもチューブが強打した。ハミルトンの病院では「手の施しようがない。視力が戻ることはもうない」と宣告され、帰国後に横浜の眼科を受診。「回復する可能性は1%か2%」と言われたが、二つ返事で手術を決意し、右目の“失明危機”と戦うことにした。

 6月8日、無事手術を終えた。術後は眼球を動かすこともできない。松本はドーピングに引っかかることを恐れて痛み止めを飲まず、何時間も激痛に耐えた。さらに、目にガスを入れたため、2週間にわたって瞳にガスが当たらないように24時間うつ伏せ状態をキープしなければいけない過酷な状況が待っていた。

「下を向いていると、ガスが頭のほうに抜けていくけど、上を向いて瞳のほうに上がると白内障になってレンズを取り替えなければいけなくなる。寝返りも打てない」

 2週間以上うつ伏せのまま過ごし、24日、ガスが抜けきり、右目を開く時が来た。視力は戻っていない。だが、松本は戦いに勝った。“1%の可能性”に打ち勝ち、失明は逃れた。暗闇からわずかな光が見えた。

「なんとなく色が分かるようになって、気配も感じられる」

 左目も網膜に穴が開いていた。両目の視力は完全ではないが、松本にとっては関係なかった。またボールを蹴られる――。その場で医師へ紙を突きつけ、「いつからサッカーやってもいいか、書いてください!」と頼み込んだ。

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