五輪世代MF井上潮音、J再開戦の“リスタート”とさらなる決意 「さらに進化するためには…」
前指揮官から“東京Vのメッシ”とも呼ばれた井上、町田戦で攪乱作戦の中心を担う
井上潮音は、試合に飢えていた。
2016年に東京ヴェルディのトップチームに昇格してプロになってから、開幕戦はすべてベンチ入りしてきた。しかし今年、開幕の徳島ヴォルティス戦は遠征メンバーから外れ、半年以上も公式戦から遠ざかることになってしまった。
東京Vがプレーオフに出場できなかった昨季は11月半ばでシーズンを終え、出場が有望視されていた東京五輪を目指す年代別代表にも18年以来呼ばれていない。かつてミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(現セレッソ大阪)が「我々のメッシ」と呼び、緑の名門を背負って立つ存在になるはずだったが、藤本寛也、森田晃樹、山本理仁、藤田譲瑠チマら下の世代の突き上げもあり、チーム内でのポジション争いに埋もれることもしばしばだ。
「長い時間、試合に出たい。そのためには試合で存在感を発揮できるようにしないと」
J2リーグ再開の東京クラシック、FC町田ゼルビア戦。井上の名前はスターティングメンバーの最後にあった。なぜか11人中唯一のFW登録。これは当の井上が「違うのにな」と苦笑していたように、永井秀樹監督による撹乱作戦だった。
キックオフの笛が吹かれると、緑の20番は中盤の底に移動し、藤田とダブルボランチを組む。東京Vはこの試合、守備時は4-4-2でセットし、攻撃時は3バック+2ボランチでビルドアップを図ったが、井上にはさらに「ハーフウェーラインを越えたら、前の5枚にボールが入ったあとのサポート役」というタスクが与えられていた。
「去年、一昨年くらいから、やっぱり個人としての怖さがないといけないと感じていました。チームの力になるためにも、相手にとって怖いプレーを増やさなければいけない」