ドイツ古豪に勝利の女神は微笑むか ブンデス“入れ替え戦”を巡る「運命の最終決戦」

ブレーメンの自力残留は消滅、状況は極めて厳しい

 自分たちに自信を持つのは大事だ。それがなければやっていけない。だが、現実的ではない過度の自信は考えることを麻痺させてしまうことがある。「ヨーロッパへ」という思いは、どこかで一度封印しなければならなかったのかもしれない。そしてクラブの問題点をしっかりと分析し、適切な補強をする必要があった。

「マックス・クルーゼがいない影響は?」

 昨季まで絶大な存在感を示していた元ドイツ代表FWマックス・クルーゼ(フェネルバフチェ→無所属)の移籍による損失を、地元メディアは繰り返し指摘していた。これに対してコーフェルト監督は、「マックスは確かにゲームを作り出す能力の長けた素晴らしい選手だった。だが、何から何までこれまでウチにいた選手に要因を求めるのは間違っている。マックスはゴール前で特別に冷静で狡猾だった選手ではないはずだ」と見解を述べていた。

 その見方も一理ある。でもそれがクラブとしての分析だとしたら、まさにゴール前で得点を決められる選手の獲得を画策するべきではなかったのだろうか。

 冬の移籍市場で獲得したのは、ヘルタ・ベルリンのFWダヴィー・ゼルケ。ダイナミックで闘争心のある良い選手だ。だが、ブレーメンの現状にあった選手だったのだろうか。加入後11試合で無得点だ。

 最終節ではケルンに勝つことが最低条件。そのうえで16位デュッセルドルフの結果待ちだ。デュッセルドルフがウニオン・ベルリンに負けたら逆転で16位へ浮上。引き分けた場合は、ブレーメンがケルンに4点差以上で勝利することが条件になる。ここ数試合連続で好プレーを披露している日本代表FW大迫勇也に期待は集まるが、今季4点差以上での勝利は第31節パーダーボルン戦(5-1)の1試合のみ。状況は極めて厳しい。

 一方、「一度も2部リーグに落ちたことがない」というのが最大の誇りだったハンブルガーSVが降格したのが2シーズン前。最速での1部復帰と意気込んで臨んだはずの昨シーズンは、戦力的には2部トップレベルの陣容を揃えながら、終盤で調子を崩して最終的には4位に終わった。

 同じ過ちを犯さないためにと、今季は経験豊富なディーター・ヘッキング監督を招聘し、万全の態勢を整えた。シーズン途中までは順調に自動昇格圏内につけていたが、後半戦途中から失速。特に再開後は勝ち点が伸びず、8試合でわずか2勝。結果だけではなく、終了間際の失点で勝ち点を逃す試合が続いてしまったのが痛い。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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