復活の大迫勇也、残留争いで示した真骨頂 大一番でゴール以上に光ったワンプレー
得点を引き寄せたクラーセンへの好パス
一時期、大迫は自分の得意なはずのプレーも発揮できない状態にあったと思う。相手を押さえ込んでパスを引き出し、その逆を取ってパスを展開し、ゴール前にも飛び込んでいく。シーズン序盤は見られていた俊敏な動きが影を潜め、競り合いで潰され、パスは味方に届かず、ゴールに飛び込むタイミングを計りかねていた。パスを自分のタイミングでもらえず、イライラしたジェスチャーを見せる試合もあった。
それがゴールこそ遠ざかっていたが、大迫はこの数試合、得点まであと少しというところまで来ていた。シャルケ戦(第29節/1-0)では、ゴール前にフリーで抜け出しパスを受けた。一瞬の判断ミスでパスを選択してしまったのは本人が一番自分に腹を立てていることだろうが、まずあの場所、あのタイミングでパスを受けられたということが収穫だったはず。ヴォルフスブルク戦(第30節/0-1)では前半、非常に惜しいシュートも見られた。
パーダーボルン戦のゴールは、そうした積み重ねの産物だ。そしてこの試合では得点シーン以上に、チーム4点目となるMFマキシミリアン・エッゲシュタインのゴールの起点となるプレーが素晴らしかった。
味方からのパスを相手からのマークを受けながらしっかりと収め、裏のスペースに抜け出したMFデイヴィ・クラーセンへ好パスを通す。得点はもう、あのパスで決まっていた。シーズン序盤に見られていた、コーフェルト監督が絶大な信頼を寄せていた大迫らしいチームの攻撃を引き出す優れたプレーだ。
前節バイエルン戦(0-1)でも攻守に奮闘し、終了間際には極めて惜しいヘディングシュートで王者のゴールを脅かした。調子は間違いなく上向いている。
ブレーメンは32節終了時点で勝ち点28の17位で、2部3位との入れ替え戦に進む16位デュッセルドルフとの勝ち点差はわずかに「1」。だがデュッセルドルフも前節、3位RBライプツィヒに0-2から怒涛の反撃を見せ、後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて貴重な勝ち点1を獲得している。必死なのはブレーメンだけではない。残り2試合、ブレーメンはとにかく2勝することが絶対条件になる。
復調した大迫の活躍で、残留の可能性を手繰り寄せたい。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。