左足のキック精度は「世界レベル」 “攻撃的GK”西川と“リスクを負わない”日本代表の姿

正確なキックが持ち味の浦和レッズGK西川周作【写真:Getty Images】
正確なキックが持ち味の浦和レッズGK西川周作【写真:Getty Images】

【歴代名手の“私的”技術論|No.10】西川周作(日本代表GK):日本における“つなげるGK”の先駆け

 今やビルドアップの成否を決めるのは、センターバック(CB)よりGKになっている。自陣から大きく蹴り返すだけでは、一時的に地域挽回にはなっても、すぐに相手ボールになって再び攻められるだけ。自陣にあるボールを安易に失わずに運べるかどうかは、必ず数的優位になるGKを使えるかどうかに懸かっている。

 ジョゼップ・グアルディオラがマンチェスター・シティの監督に就任した時、GKにはイングランド代表のジョー・ハート(バーンリー)がいた。しかし、グアルディオラはハートを放出して、より足下の上手いGKを求めた。ボールを保持したいチームにとっては死活問題だったからだ。

 日本代表がボールを保持したいのか、そうでもないのかは、よく分からない。

 南アフリカ・ワールドカップ(W杯)から3大会連続で日本のゴールを守った川島永嗣(ストラスブール)は、両足が使えるGKだがパスワークに秀でているタイプではない。ロシアW杯でもロングキックが多かった。ベルギー戦(2-3)の終盤に攻勢をかけられた時、日本がボールを安易に放棄せずに自陣からでもつないでキープできていれば、最後にひっくり返されることはなかったかもしれない。しかし、日本はそこまでボールキープ力に優れておらず、GKもつなぐための人材を使っていなかった。他の試合も、ポゼッションを武器にしようというまでの意思は感じられなかった。

 日本のパスワークは平均以下ではないが、武器になるほどハイレベルでもない。そうかといって安全第一にロングボールを蹴り出し、セカンドボールを拾うか、守備を敷き直せば大丈夫というほど堅守でもない。日本の選手の特徴や嗜好性からして、「つなぎたかったけど、つなげなかった」ということだと思う。

 大会後、日本サッカー協会(JFA)は「ジャパンズ・ウェイだった」とチームの戦いぶりを称賛していたが、この点に関しては現状を肯定することには意味がない。つなぎたかったけどつなげない現状を「日本らしい」と言ったところで、なんの解決にもならないからだ。つなぐより他の方法にするか、つなぎたいならその意思を固めるかだろう。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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