倉田秋、”大阪ダービー史”に刻む「豪快ミドル弾」 遠藤&今野が先発不在も燃えた10番のプライド
【J番記者が選ぶスーパーゴール|G大阪編】2019年J1第12節C大阪戦(後半10分)…倉田の豪快ミドルシュート
右スローインから始まって繋いだパスは14本。ガンバ大阪はホームサポーターの目の前でボールポゼッションを続けながらゴールチャンスを伺う時間が続く。サポーターも背中を押すようにコールをやめない。
「0-0で終わるわけにはいかない」
ピッチからも、スタンドからもそんな気迫が漂っていた。その思いを歓喜に変えたのが、MF倉田秋だ。ペナルティエリア中央付近でMF高江麗央からの縦パスを受けた倉田が巧みなトラップで相手ゴールに詰め寄り、右足を豪快に振り抜く。その瞬間、パナソニックスタジアム吹田のボルテージは最高潮に達し、耳をつんざくような歓声に包まれた。
この試合を迎えるにあたり、G大阪は7試合連続白星なしという苦境に立たされていた。しかも前節は最下位のサガン鳥栖に1-3で完敗。過去を振り返ってもここまで深刻な不振が続く状況で「大阪ダービー」を迎えたのは初めてだったと記憶する。
その状況を打開しようと宮本恒靖監督が動き、4バックを3バックに変更。「勝つ可能性を第一に求めてメンバーを構成するのが監督の仕事(宮本監督)」という考えのもと、ベテランの遠藤保仁、今野泰幸ら前節の先発メンバー5人をベンチに下げ、代わってJ1デビューとなるルーキーのDF高尾瑠やプロ2年目で約1年3か月ぶりのJ1先発となるMF福田湧矢、今シーズンJ1初先発の高江ら若手を先発に据えた。
そのなかで序盤はセレッソ大阪に主導権を握られた感も強く、開始早々の10分にはビッグチャンスを与えてしまう。だがそのピンチを日本代表GK東口順昭の気迫あるセービングでしのぐと流れは徐々にガンバへ。それでも、ゴールが割れない焦れる展開が続くなか、後半10分に均衡を破る一撃を叩き込んだのが倉田だった。
「ファーストタッチが思ったより右側にいったのでファーに流すより、あそこに思い切り蹴ったら入るかなと思ってシュートを打ちました。アドレナリンが出ない方がおかしいというようなすごい雰囲気をサポーターが作ってくれていた。ミスをしても全員で取り返せばいい、あまり考えすぎずに思い切りやろうと話していて、それが試合に出せた。自分たちの立ち位置を考えてもまだまだやらなきゃいけないという気持ちの方が強いけど、この勝利を巻き返しのきっかけにしたいと思う」
実は、試合前には期する思いを秘めていた。12年にG大阪に復帰して8年目。チームの支柱へと大きく成長した倉田だが、過去の「大阪ダービー」を振り返っても、遠藤や今野が揃って先発のピッチにいないダービーは記憶になかったからだ。
「正直、試合前はどうなるんやろ、という気持ちもありました。でも、だからこそ自分が引っ張っていかなアカンと意識して臨んだ試合でした」
その自覚の先にあった決勝点。「10」番を背負うプライドと責任を確かに感じたゴールだった。