中島翔哉が触れば“何かが起こる” 唯一無二の才能も…日本代表にとっては「諸刃の剣」
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【歴代名手の“私的”技術論|No.8】中島翔哉(日本代表MF):森保ジャパンで最も“違い”を作れる特別なアタッカー
現在の日本代表で最も「違い」を作れるプレーヤーは、中島翔哉(ポルト)だろう。
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小柄な体躯はむしろ有利に働いていて、狭いところへ追い込まれてもすり抜けられる。正確で鋭いシュートを素早く放ち、ラストパスのアイデアもある。ボールに触れば何かが起こる――そう思わせる特別なアタッカーだ。
一方で、中島はチームに問題も投げかける。左サイドハーフが主な持ち場だが、DFの近くまで引いてボールを預かり、そこからドリブルとパスで一気にゴールへ迫るスタイルゆえに、守備に切り替わった時に自分のゾーンへ戻れない。
行動範囲を主に左サイドに制限してしまえば守備には入れるが、それでは中島の攻撃力を削ぐことになってしまう。そもそもサイドに固定しても、守備力にはあまり期待できない。
リオネル・メッシ(バルセロナ)やクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)など、守備の勘定に入っていないウイングは存在する。メッシもロナウドも攻撃ではゴール前へ入って行く。そして彼らは、チームで最後に守備をする選手になっている。彼らの代わりに守備を請け負うのは主に反対サイドのウイングで、逆サイドのウイングが中盤の守備ラインに入ることでバランスを取っている。
4-3-3のほうがMF3人のスライド+ウイングなので修正は早いが、4-4-2でもやれないことはない。
ロシア・ワールドカップ(W杯)で優勝したフランスは、右サイドハーフのキリアン・ムバッペが攻め残る代わりに、左のブレーズ・マテュイディが素早く帰陣して、とりあえず中盤のラインを3人で形成していた。プラス1としてムバッペが引くケースはあるが、足が速いので戻れそうもないケースでも間に合っている。
日本代表で自由奔放な中島の良さを消さずに守備に穴を開けないためには、逆サイドの選手の守備力と運動量がポイントになるだろう。ディフェンスラインを引きすぎても上げすぎてもうまくいかない現状から、中盤のライン形成はチームの生命線になるだけに、中島の逆サイドの人選を誤ると致命傷になりかねない。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。