INAC“魅惑のユーティリティー”吉田凪沙、「勝負の年」に掲げるレギュラー奪取の野望
ボランチだけでなく、SB、CBとしても新たな可能性を追求「自分の幅が広がる」
そのなかで、エンゲルス新監督の就任は、吉田が飛躍を遂げるきっかけになる可能性がある。新型コロナウイルスの影響でリーグ開幕延期、チーム活動休止となったため、土台作りの段階で足踏みを余儀なくされてしまったが、今年はボランチだけでなく、最終ラインの一角としてもトレーニングを積んでいたという。
「今年チームが目指すのは、後ろからもつないでいくスタイル。ビルドアップの練習も多いし、クオリティーが求められます。サイドバックやセンターバックでもプレーしていて、サイドバックの時はポジションを中央寄りに取ることもあるので、サイドハーフの選手と上手く幅を取れるように意識しています。ボランチをやっていた経験も生かせるかなと。大学時代は怪我人が出たポジションを埋める“なんでも屋”という感じだったので、最終ラインに入っても違和感はありません。自分の幅も広がるし、ボランチとしても周囲はどういう動きをしてほしいとか理解できるのでプラスになる。結構楽しくやっています」
INACのサイドバックはMF髙瀬愛実、DF鮫島彩となでしこジャパン経験者が不動のレギュラーとして立ちはだかる。しかし、鮫島は昨秋から怪我で長期離脱し、選手層も他のポジションに比べるとやや手薄な印象は否めない。対人プレーに優れた吉田も、アピール次第では競争に割って入れるだろう。本人もサイドバック、センターバックという自分の新たな可能性にやりがいを感じている。
「鮫島さん、髙瀬さんは経験と実績のある選手ですけど、サッカーになったらそういうのは関係ないと考えてやりたいです。凄い選手だからこそ、プラスになる部分は盗んでいきながら、自分らしさを出していきたいなと。身長はチーム内でもスタンボー(華/175センチ)、武仲(麗依)さんの次なので、相手の起点を潰す守備を生かしながら攻撃を封じていきたいし、去年コーチに教えてもらって自分の武器になりつつあるロングキックで、最終ラインから一発裏を狙ってアシストもしていきたいと思います」
なでしこジャパンについて問えば、「今はまだ自分が行けると思わないので、目指せない部分があります」と正直な気持ちを語る吉田。なでしこリーグ1部でのキャリアを歩み始めたばかりだけに、目の前の戦いに集中する心構えだ。
「今年は勝負のシーズンだと思っています。どんどん試合に絡んでいくことが一番の目標。そのなかで、試合に限らず練習中からも勝負にこだわってやっていきたいです」
ユーティリティーの吉田が、“エンゲルス・サッカー”にどのような彩りを加えるのか興味深い。
※取材はビデオ会議アプリ「Zoom」を使用して実施。
(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)