遠藤航は“もっと怒っていい” 1部昇格を争うシュツットガルトで放つリーダーの風格

淡白なチームの中で攻守に奮闘、貢献度の高さは誰もが認めるところ

 敗戦の原因を考えると、確かに終了間際のPKはシュツットガルトにとって厳しい判定だったのは間違いない。VAR判定でもすぐに確認しきれないくらい際どい判定ではあった。ただ、そのPKでの失点以前に、終盤自分たちのミスから相手に危ないところまで持ち運ばれるシーンが続いていたことが問題だった。

 ハンブルガーSVは同節引き分けて、同勝ち点(45)ながら得失点差で2位へと浮上。自動昇格の2位以内を目指すためにも、シュツットガルトは時に泥臭く勝ち点を奪いにいくことも大切ではないか。ミスリンタットSDも「抵抗力のところが問題だ」と、時に淡白な守備を問題に上げている。

 今、中心選手として遠藤にはチームを支えるだけではなく、導く役も求められてきているのではないだろうか。

 この日はアンカーの位置で、相手の狙いを先読みしては何度も攻撃の芽を摘み、ボールを奪うと的確なインテリジェンスを感じさせるパスで攻撃をコントロール。さらにはペナルティーエリア外からの強烈なミドルシュートも何度も見られた。後半もボールが足につかない味方選手が多いなか、遠藤は冷静でミスの少ないプレーでなんとかリズムを取り戻そうと奮闘し、終盤には体を張ったスライディングで相手の決定機を阻止した。

 チーム内で一番安定感のあるプレーをしていたのは間違いない。だからこそ、味方の不用意なミスに食ってかかるくらいの仕草をもっと見せてもいいのではないかと思うのだ。大声を張り上げ続ける必要はないが、ここぞという局面で空気を引き締めることで、チームにまた落ち着きと緊張感をもたらすことができるかもしれない。プレーにおける貢献度は誰もが認めるところ。その発言には、みんな耳を傾けてくれるはずなのだ。

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(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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