「あと10年早ければ」 宮本恒靖氏も憧れるガンバ大阪の新スタジアムに見る未来
実際にヨーロッパのスタジアムで感じたこと
――宮本さんは世界中のスタジアムでプレーされてきましたが、日本が参考にしたいと感じたことはありますか。
宮本「ヨーロッパではスタジアムがサッカービジネスの中心になっているんですね。FIFAマスターの時に学んだのですが、ヨーロッパには”UEFAファイナンシャルフェアプレー”というルールがあって、2018-19シーズンからは、直近の3シーズンの支出と収入の差がマイナスになるとペナルティーが科せられます。でも、その支出の中にスタジアム建設に関わるお金は含まれない。UEFAはスタジアムを造って、お金を生み出すことを各クラブに推奨しているわけです。ユベントスは11年に新スタジアムを建設しましたが、自前で建てて、管理も自分たちで行っている。自前のスタジアムであれば、テナントの賃貸料も入ってくるし、スタジアムを借りるお金も発生しない。実際にユベントスも収入はアップしているようです。ガンバのスタジアムが日本における新しいビジネスモデルになるかもしれません」
――「スタジアムがお金を生む」という発想は日本のサッカーには今までなかったものですね。
宮本「ヨーロッパのやり方を全て見習うことは難しいと思います。ただ、ヨーロッパに行って日本よりも進んでいるなと感じたことは多くありました。例えば、僕がプレーしていたザルツブルクでは、試合後にラウンジでスポンサー企業の人たち、選手やその家族などが食事をするんです。ちょっとサインをしてあげたり、写真を撮ってあげたりもする。でも日本のように囲まれることはない。そういう程よい距離感がありました」
――スポンサーにとっては、応援しているクラブの選手たちとそうやって触れ合えるのはメリットですよね。
宮本「ヨーロッパでは、それだけサッカーの地位が高いということもあります。だから、クラブを応援することや試合を見に行くことがステータスになるし、スタジアムがある意味で社交の場になっている。もちろん、観客席で応援してくれるファンやサポーターの方々を大事にしながら、スポンサーを満足させるための仕組みを作ることも考えていくべきだと思いますし、ガンバもそこに取り組んでいくと聞いています」
――ブンデスリーガのクラブでは、シーズンチケットによる安定収入がクラブの経営の柱になっているとも言われます。
宮本「ヨーロッパではシーズンチケットを持っていること自体がステータスになっているんです。買いたい人が多いので、ウェイティングリストがあって数年待ちということも珍しくないそうです。シーズンチケットを持っている人も毎試合見に行くわけではないけど、失ってしまうと買えなくなるからずっとキープする。クラブにとっては、シーズン前の段階で売り上げが確保されるという面で大きい。日本の場合、まだまだサッカー文化、Jリーグのステータスの高さを確立できていない中で難しいかもしれませんが、新スタジアムがそういうきっかけになっていってほしいですね」