なぜメキシコでプロ指導者に? 「日本よりチャンスがある」監督学校、異国で戦う2人のコーチ

1部ケレタロの下部組織で指導する塩沢氏(右)と給田氏【写真:福岡吉央】
1部ケレタロの下部組織で指導する塩沢氏(右)と給田氏【写真:福岡吉央】

1部ケレタロの下部組織で指導する塩沢氏と給田氏を直撃

 日本ではなく海外で指導者資格を取得し、そのまま現地で指導を続ける日本人が最近増えてきている。それは、サッカー界で「北中米の雄」と言われるメキシコでも同じだ。

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 かつて元ブラジル代表FWロナウジーニョもプレーした1部リーグのケレタロでは、2人の日本人コーチが奮闘中だ。U-20アシスタントコーチ兼U-14監督を務める塩沢拓也氏と、現在、監督学校に通いながらU-16アシスタントコーチを務める給田洋右氏。2人はともにプロ経験はないが、異国の地で指導者としてのキャリアを重ねている。メキシコの「監督学校」とはどんなものなのか。2人の挑戦に迫った。

 メキシコの監督学校には、指導者を志す様々な世代、そしてキャリアを持った人たちが通っている。授業は半年区切りの4期制。18歳以上なら、プロ経験どころかサッカー経験がなくても誰でも受講することができ、最短2年間でプロのトップチームの監督に就任できる資格を得られる。授業料は4期で約50万円。メキシコの平均月収が月5万円程度であることを考えると、地元の人間にとっては生活に余裕がなければ難しい額だが、外国人でも語学力と情熱さえあれば、監督資格を取得することが可能だ。

 監督資格は1期目を終えるとU-15の監督ができるようになり、2期目でU-17と4部リーグ、3期目でU-20と3部リーグ、4期目で1、2部リーグ、女子プロリーグの監督と、段階的にステップアップしていく。アシスタントコーチに関しては、資格は不要だ。学校を卒業すれば、メキシコだけでなく中米の他の国でも指導が可能。日本ではS級相当としては認められていないが、南米ではメキシコの資格で指導者をしている人もいるという。

 学校は全国に9カ所あり、授業は週に1回6時間。戦術、技術の授業がメーンで、フィジカルやコミュニケーション、心理学、医学、監督哲学、ルールの授業もあり、宿題も出る。ほとんどの時間がピッチでの指導の時間に充てられ、講義が少ない日本とは違い、メキシコでは6時間中5時間が座学だという。各科目、6割以上の点数が取れれば合格で、評価のうち60%がテストから。ほかに授業態度、出席率、宿題なども評価の対象になる。

 2019年7月から監督学校に通い出し、現在2期目を受講中の給田氏は、監督学校についてこう話す。

「サッカー経験、指導者経験がなくても監督の資格を取れるのがメキシコの特徴。今のクラスには30人の生徒がいますが、サッカーが下手な女性もいますし、本当の素人もいる。外国人も私だけでなく、エジプト人の医者や、メキシコで10年以上プレーしていた元プロのブラジル人もいます。メキシコ人の中には、現役で2部でプレーしている選手や、日韓ワールドカップに出場していた元メキシコ代表の人もいる。グラウンドでの実技がやたら上手いので、聞いてみたら元プロだったってこともありました。

 そんななかに、中学で公式戦出場ゼロ、高校も弱小チームで、ここにいてはいけないような自分もいられる。本当にすごい環境だなと思います。授業は内容的にはついていけるのですが、専門用語のスペイン語がたくさん出てくるので、言葉を覚えないといけないのが大変ですね」

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