「真のビッグクラブ」となるために ガンバ社長が語る新スタジアムの野望
デザインに反映されたサポーターの意向
――スタジアムのデザインなどにサポーターの意向は反映されたのでしょうか。
野呂「12年の3月に、サポーターの代表に来ていただいて、2時間近く要望を聞きました。それを受けての変更点もありました。このスタジアムは3層構造になっているのですが、1層と3層の間はVIPルームが”はちまき”のようにグルッと巻く形になっている。リーガ・エスパニョーラのエスパニョールのスタジアムもそんな感じですね。でもゴール裏の方からは『ちょっと待ってほしい。ゴール裏になぜVIPルームがあるのか。ゴール裏は一枚岩になって1万人ぐらいで応援できるようにしたい。ゴール裏が一体感を持って応援できるようにしてほしい』と要望がありました」
――なるほど。
野呂「でも、それだとスタジアムの構造自体を変えなければいけない。ゴール裏だけ3層構造にしないとなると、10億円ぐらいが新たにかかる。それでも彼らの要望を取り入れました」
――昨年、東京五輪のメインスタジアムとなる「新国立競技場」をめぐっては、その巨額の建設費が論議の的になりましたが、あらためてガンバの新スタジアムの建設費用の安さが話題となりました。
野呂「通常はスタジアムを造る際の相場が1席当たり50万円で、そうなると4万人で200億になります。その値段を考えてもずいぶん安いのですが、施行を担当した竹中工務店さんが1席35万円ぐらいで造ってくれました。また、通常の4万人規模のスタジアムに比べると底面積が2、3割少なくなっています。小さな面積に押し込んだので土地代が安くなりましたし、上に高くなったことで、結果的に臨場感も増しました。鉄材もコンクリートも、使っている量が他のスタジアムよりも少なくなっています」
――削れるところはしっかりと削ると。
野呂「簡単に言うと、小さくてシンプルな構造になっている。それとスタジアム内部は全て直線で造られているんです。曲線の構造にすると、建築費用が高くなりますからね。スタジアムの外装はコンクリートの打ちっぱなしですから、『コンクリートの塊みたい』と言う人もいますけど、これが完成形です。いわば”スッピン”です。スタジアム内部につながる階段も鉄製で非常に幅が広い。建築費も安くなって、メンテナンスも安く済む。コンクリートもあらかじめ工場で作ってから現場に運んでくるという”プレキャスト工法”を用いています」