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悪童バロテッリを受け入れたリバプールの男たち 「Balotelli’ll Never Walk Alone」【2】
孤独を抱える男に贈られる歌
インテル、マンチェスター・C、ミラン時代と監督がサジを投げてきたこの爆弾を、この名将と、リバプールは処理することができるのだろうか。少なくともその自信がなければ、ロジャーズという監督が獲得に踏み切ることはなかったはずだ。彼を、真の一流プレーヤーにする覚悟で、リバプールに連れてきたのである。だからこそ、正式契約を結ぶ前に、バロテッリの覚悟を自らの目で確認する必要があった。3時間半にも及ぶ直接会談を持ったのはそのためだろう。
インテル時代には、あの“スペシャル・ワン”でさえも「手に負えない」と公言する始末で、ベテランのDFマテラッツィらからも冷遇され、追い出されるかたちでマンチェスター・Cへと移籍した。マンチェスター・Cでは度重なる問題行動からポジション定着に失敗し、誰にも惜しまれることなくミランへと活躍の場を求めた。
ミランではエースストライカーとして期待されるも、わずか1年でミラン副会長ガッリアーニに売却され、元イタリア代表FWヴィエリに「副会長はミランの歴史において最高の取引をした」と皮肉られる始末だ。
バロテッリは孤独であり続けた。サッカー選手としての天賦の才を授かりながらも、常日頃から評価よりも批判の対象となってきた。素晴らしいフィジカル、スピード、スキルすべてにおいてワールドクラスでありながらも、チームを転々とし、居心地の良い居場所を見つけられずにいた。
しかし、リバプールは非常に器の大きいチームだ。どれほどスアレスが問題を起こし、非難が集中してもクラブはスアレスの前で壁となり、変わらぬサポートを表明し続けてきた。サポーターは、かみつき事件などで長期出場停止となり、チームに悪影響を与えた男がピッチに姿を現せば大歓声で迎えた。
リバプールには、最高のお手本と呼べるイングランドが世界に誇るキャプテンMFスティーブン・ジェラードがいる。ロジャーズ監督と、そのジェラードとともに、スタジアム内ではレッズを支える歌唄いたちがバロテッリの背中を押してくれるはずだ。リバプールは、彼と一緒に歩むため、手を差し伸ばしたのだ。
バロテッリのホームデビュー戦は9月13日のアストンビラ戦が濃厚だ。赤いユニホームを身にまとい、初めてアンフィールドの地に足を踏み入れたとき、耳にするのは『You’ll Never Walk Alone』の大合唱だ。
「おまえを決して独りでは歩かせない」
それは、孤独を歩んできたストライカーへと送られる、リバプールからのメッセージである。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web