悪童バロテッリを受け入れたリバプールの男たち 「Balotelli’ll Never Walk Alone」【2】

ロジャーズの覚悟

 先日、QPRのFWロイク・レミーがメディカルチェックに引っ掛かり、土壇場でリバプール移籍が破綻した。市場に残るストライカーは少なくなっていた。移籍のうわさが絶えなかったパリ・サンジェルマンのウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニ、モナコのコロンビア代表FWラダメル・ファルカオはともに条件が高く、手が出せなかった。バロテッリとの交渉不調時の保険として交渉を進めていたFWサミュエル・エトーも結局はエバートンに移籍したわけだが、34歳という年齢がネックになっていたという。
 そこで白羽の矢が立ったのが、FWマリオ・バロテッリだった。監督のブレンダン・ロジャーズは開幕前の米国遠征中で、「彼がチームにいないと断言できる」と悪童獲得の可能性を完全否定していた。だが、それには明確な理由が存在した。ロジャーズは選手に「規律」を求める。ピッチ外の素行はもちろんのこと、ピッチ内でも前線からのハイプレスや動き出しなど、プレミアリーグでも極めてルールの多い監督だからだ。
 それに対して、バロテッリはマンチェスター・C時代に数々の問題行動を起こしてきた。自宅内で花火をしてボヤ騒ぎを起こし、ユースの選手に向かってダーツの矢を投げた。揚げ句の果てには、練習中に監督であるロベルト・マンチーニの胸ぐらをつかむなど、手に負えない問題児として名をはせた。
 ミラン時代からの年俸の50%減を受け入れたというバロテッリだが、リバプールとの契約内容の中に、罰金条項として、練習への遅刻、練習妨害、そして、警察に逮捕という条件まで提示されているとのことだ。それに加えてロジャーズが懸念しているのは、1人の選手としてのバロテッリだ。
 彼の試合中の運動量は、著しく少ない。ハイプレスを怠り、自らボールを要求するような動き出しもまれである。スアレスはどう猛に走り続け、スキあらばGKからもボールを奪い取ろうとするような貪欲さを備えていた。
 対するバロテッリは、ボールを受けてからプレーを開始する。いわゆるオン・ザ・ボールでのみ仕事をするプレーヤーである。自ら率先してゲームをつくるスアレスを「能動的」と形容するならば、バロテッリは極めて「受動的」なプレーヤーなのだ。
 ロジャーズ監督が何よりも選手に求めているのが、その「能動的」な要素であり、チーム内で生き残るための最低条件でもある。彼がリバプールで戦っていくためには、ピッチ内外での改心から着手せねばならない。

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