「チーム愛の熱量が違う」 メキシコに学ぶ“女子プロリーグ”成功の鍵、現地日本人の視点
待遇面では問題点、男女との給与格差は実に156倍
プロの全国リーグができたことで、代表選手の選考も容易になったという。塩沢氏は「うちのチームにもU-15、U-17に選ばれている選手がいますが、リーグの若手起用ルールで試合に出るようになり、代表にも選ばれた。今はリーグの試合を見ていればメンバーは選べる。彼女はこのリーグがなかったら埋もれていた選手。女子はまだまだ採算は合わないが、今まで代表に縁がなかった選手でもきっかけが増えてきたし、一定の効果は出ていると思う。これまでは、メキシコ代表と言っても、アメリカ育ちで、アメリカの高校、大学でプレーしてきた選手が多く、合宿でも皆、英語で話していましたから」と、リーグの存在意義を評価する。実際、U-20女子代表が8大会連続となるU-20W杯出場を決めるなど、若手育成は順調だ。
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またメキシコサッカー連盟では今年から、各地で定期的に女子向けのクリニックを開催するようになった。参加者は一般公募。1部のチームがない地域にも女子サッカーを普及させようと、メキシコ全土にコーチを派遣し、将来を見据えた普及、強化に力を入れている。
もちろん、まだまだ問題点もある。女子のクラブハウスや寮がないチームも多く、遠征も男子のトップチームが飛行機で移動する距離を、10時間以上かけてバスで移動することもザラだ。サラリーも男子とは雲泥の差がある。地元での報道をまとめると、女子のサラリーは最も低い選手で月に2500ペソ(約1万2500円)。リーグ平均が約3500ペソ(約1万7500円)で、メキシコの最低賃金である約3000ペソ(約1万5000円)を下回っている選手もいる。
地元メディア「シン・エンバルゴ」は昨年、男女のサッカー選手の給与格差について報道。それによると、男子の月平均は54万5000ペソ(約272万5000円)、女子が3500ペソで、実に156倍の格差があるのだという。実際、女子選手たちも「練習に行くのに交通費もかかるし、(アスリートとして)食事も考えて食べなきゃいけない。贅沢をしている余裕はない」と話しており、中には空き時間にアルバイトをしている選手もいるのが現状だ。
19-20シーズンの前期リーグではモンテレイが優勝したが、約束されていたはずの優勝ボーナスは支払われず、選手たちに支給されたのは、32GのiPadだけだった。地元スポーツ紙は「差別」と書かれた見出しと、涙を拭うモンテレイの女子選手の写真を1面に掲載し、その格差を報じた。ただ、強豪チームの主力の中には、月5万ペソ(約25万円)をもらっている選手もおり、選手としての価値を上げれば、まったく稼げない訳ではない。