ドイツ3部で戦う日本人アナリストの挑戦 “W杯優勝”を支えた男が抱く新たな夢とは?
【日本人アナリスト浜野裕樹の奮闘|第1回】2014年W杯優勝を支えた「チーム・ケルン」の一員として活動
ドイツの「ブンデスリーガ」と聞くと、多くの人がイメージするのは華やかな1部リーグの世界だろう。現在はハノーファーで日本代表MF原口元気、シュツットガルトで同MF遠藤航、そしてザンクト・パウリではMF宮市亮が活躍しているので、2部リーグへの認知度も多少はあるのかもしれない。
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だが3部リーグとなると、さすがにほとんど情報は出てこない。たしかにレベルや規模で言えば1、2部とは比較のしようもないが、ドイツでは3部リーグまでに「ブンデスリーガ」という呼称が付くのだ。デュイスブルク、ハンザロストック、インゴルシュタット、1860ミュンヘン、ブラウンシュバイク、カイザースラウテルンと元1部リーグクラブが多く名を連ね、元ドイツ代表MFケビン・グロスクロイツ(ユルディンゲン/元ドルトムント)など1部、2部で活躍していた名選手も、まだまだ現役でプレーをしている。
そんなドイツの3部リーグで活躍している日本人スタッフがいる。
現在12位につけているビクトリア・ケルン。ここにはアナリストとして、チームを支える日本人がいる。浜野裕樹、現在32歳だ。浜野のドイツでの歩みを語るうえで外せないのが、2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)になる。
ブラジルの地でドイツ代表はアルゼンチンとの決勝に勝利し、通算4度目となるW杯優勝を果たしたわけだが、当時浜野はケルン体育大学とドイツサッカー連盟(DFB)の共同プロジェクト「チーム・ケルン」に所属し、スカウティングチームの一員として代表チームをサポートしていた。そのことで、少し日本メディアにも注目されたことがあった。
同大会ではドイツ代表が導入していた「マッチインサイト」が、大会後に注目を集めたのを覚えているだろうか。「マッチインサイト」というのは、タッチパネル方式で選手が自由に情報を引き出すことができるもので、マッサージルーム前などの待合室に大きいモニターを2つ設置し、選手がそれを使ってコミュニケーションをしやすいようにしたという。使われ方について、浜野は以前こんなふうに語っていた。
「率先してやり始めたのが、バイエルンの選手たちだったんです。バイエルンにはすでにマッチインサイトが導入されていて、選手は使い方を知っていたんですよ。(フィリップ・)ラームとか(トーマス・)ミュラーやシュバイニー(バスティアン・シュバインシュタイガー)とかが『これ知ってる、うちのクラブにあるよ』って言って使い出して、他の選手が『これ何?』って興味を持って」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。