「日本の練習は長すぎる」 メキシコ在住コーチが語る、両国の育成環境の違いとは?
メキシコ人は集中力が90分持たないが「アドリブが得意」
日本のように、練習メニューに統一性があまりないこともメキシコの特徴だ。メキシコでは時々、フィジカルコーチのメニューは守備、アシスタントコーチのメニューは攻撃、監督のメニューは守備といったように、指導が分業制になっている影響で、内容がバラバラになることが頻繁に起きるという。日本の指導者資格も持つ塩沢氏は、「日本は講習会を見ても、全体をオーガナイズすることをすごく重視している。C級の指導者ライセンスでも、1日のトレーニングにはアップからメーンにいくまで共通のテーマがあった。攻撃と守備が交差していることはない」と、両国の違いを比較する。
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ピッチ上のプレーにも国民性が出るという。給田氏は「日本人は集中力があるから、90分間これをやっておけと言われれば、決められたことができる。でも、メキシコ人は集中力が90分持たない。逆にアドリブは得意。アイデアもメキシコ人のほうがある。例えば1人退場しても、誰も慌てない。監督が言う前に、賢い選手が『1人下がっておけ』と言うし、監督も平然としている。日本だと全員がバタバタしてしまう。日常生活を見ても、日本だと電車が時間通りに来ないと慌てるし、怒る人もいる。メキシコではバスが来なくても慌てないし、来るまで待っている。想定外の時の対応力がある。急に練習時間が変わるのにも慣れている」と、国民性の違いがサッカーにも表れていることを指摘した。
メキシコのクラブでは、成績が残せなければ6カ月ごとに監督が変わる。それはトップチームだけでなく、下部組織の指導者たちにも当てはまる。選手も、出場機会を求め、他クラブに移っていくケースもある。塩沢氏は「シーズンが6カ月ごとに入れ替わるので、新陳代謝が起こりやすい」と、その特徴を明かす。
一方で「6カ月だと、成長が遅い子は体が小さくて切られてしまう子もいるので、ネガティブに作用する場合もある。日本のように3年計画で育成すれば、選手が途中で成長して身長が伸びたり、体の強さが出てくる場合もある。ただ、指導者と合わなければ3年間不遇の時を過ごさなければならないかもしれない」と、それぞれのメリット、デメリットを指摘する。
選手のスカウティングは、担当の育成スカウトたちが各大会をチェックし、目ぼしい選手を練習に参加させ、プレーをチェックしたうえで獲得する形が取られている。半年に一度セレクションも行われるが、参加者約200人の中で入団できる選手は2、3人。遠方の選手のうち、突出した才能がある選手は入寮できるが、そうでない選手は寮の近くに下宿し、寮で食事をとるのだという。
背番号はトップからの通し番号で400番台まである。こうしたヒエラルキーも、選手たちにとっては這い上がっていくためのモチベーションとなっている。また、次の世代に進めなかった選手はプレーの場を求め、リーグの3部、4部へと流れていく。