「日本の練習は長すぎる」 メキシコ在住コーチが語る、両国の育成環境の違いとは?

フィジカルコーチの指導のもと、アップを行うケレタロの下部組織の選手たち【写真:福岡吉央】
フィジカルコーチの指導のもと、アップを行うケレタロの下部組織の選手たち【写真:福岡吉央】

スペシャリストを育てるメキシコ、監督の指導法には課題も…

 メキシコでは疲労度の管理も徹底しており、選手たちにGPS装置を付けさせて練習しているクラブもある。ケレタロでは練習後、フィジカルコーチが選手たちに疲労度や睡眠時間、尿の色など6項目を申告させ、パソコンでデータを管理しているという。筋力トレーニングは週3回程度あり、これもフィジカルコーチの担当。体重、体脂肪の測定も欠かさない。

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心理カウンセラーを置いているのも特徴だ。例えば、選手に家族の不幸があった場合など、何かメンタル面での問題が生じた時に対処できるよう、カウンセラーは日頃から選手たち個々と話をしてプライベートで何が起こっているのかを把握し、ケアできる体制を敷いている。監督ともコミュニケーションを取り、試合に出ていない選手でも個々のモチベーションを保てるように配慮。またチームでは週に一度、スタッフミーティングがあり、それぞれが各選手の状況を把握できるようになっている。

 こうしたスタッフの違いは、社会的な要素も絡んでいると給田氏は指摘する。

「日本の会社って、何でもできるゼネラリストを育てようとする。それはサッカーでも同じで、指導者の知識も広く浅く。メキシコは逆で、スペシャリストを育てる」

 現在J2のV・ファーレン長崎で、地域リーグ、JFL時代にマネージャーを務めていた給田氏は、「僕のように、用具係から指導者になろうとする人はメキシコにはいない。そこが日本との違いです」と説明する。

 指導者は、情熱的なタイプが多い。そして、話好きな国民性は、監督のチームの統率力にも表れている。ケレタロでU-20アシスタントコーチとU-14監督を務める塩沢氏は言う。

「試合前のモチベーションを上げるスピーチに長けた監督が多いと感じています。監督学校でも常に討論がありましたが、人前で話すのが上手い口達者な指導者が多い。全体の中で話をする時に、個々へのメッセージを盛り込んだりする監督もいます」

 一方で、課題もあるという。

「試合を指揮したり、グループのモチベーションを上げることに長けているメキシコ人は多いが、トレーニングを通して良い習慣を付けさせたり、改善していくというのがメキシコにはないとよく言われています」

 試合中のベンチからの指示も「もっと走れ」「気持ちで勝て」「気合い入れていけ」といった精神論が多いという。問題が起こったら、その場で解決すれば良いというのがメキシコ流だ。

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