新型コロナでW杯の姿が変わる? 見えないウイルスの終息、逼迫する予選日程
【識者コラム】各大陸予選が延期、感染拡大でホーム&アウェー方式の戦いが困難に?
気の早い話だが、2026年ワールドカップ(W杯)の出場国は48チームに増加する。グループリーグは3チームが16組に分かれ、上位2チームがノックアウトステージへと進む。つまり出場する16カ国のW杯は2試合で終了、さらに決勝トーナメントに進んでも1回戦敗退の16カ国は合計3試合――現行のグループリーグ敗退と同じ試合数で大会から姿を消すという、なんだかあっけない大会に変わるわけだ。これで、大丈夫なのか。
ジャイアントキリングが続発すれば、それはそれで面白いかもしれないが、強豪国が軒並みグループリーグ2試合で、あるいは運不運に左右されやすいノックアウト方式の決勝トーナメント1回戦で姿を消すような事態になれば、大会が盛り下がることは確実だろう。例えばブラジル、ドイツ、イタリア、イングランド、スペイン、アルゼンチンのような国が、ベスト16を前に大会から揃っていなくなることだってありえるわけだ。自国が2試合しかプレーしないかもしれないワールドカップに、今までどおり莫大な放送権料を払う国がそんなにあるのだろうか。
一方、22年カタールW杯の出場国は従来と同じ32チームだが、現在の新型コロナウイルスの状況次第では、大会日程を短縮するような動きがあるかもしれない。そもそも、W杯を開催できるのかという疑問もある。
新型コロナウイルスによって、世界的にサッカーは止まっている。いつ再開できるのかも分からない。感染の収束は現実的にワクチンの普及待ちだと思うが、ワクチンを広く接種できるようになるには、早くても1、2年はかかると見られている。本大会には間に合うとしても、問題はホーム&アウェーで行われる各大陸予選だ。2年かけるはずの予選を1年以下に短縮するとなると、日程はかなり逼迫する。
まだ感染が完全に収束していない状況なら、アウェーのチームを入国させても2週間は隔離する必要があるだろう。ただでさえ日程がきついのに、さらに余分に日程を取るのはまず無理だ。予選のやり方をセントラル方式にするなど、レギュレーションの変更が必要になると思われる。しかし、それでも集中開催の日程を確保するのは簡単ではないかもしれない。
いつか感染は終息する。ただ、その間に世の中のいろいろなことが変わっているだろう。サッカーにも必ず影響は出てくる。
ゼップ・ブラッターFIFA前会長は、「カタールではなく、アメリカや日本で開催すればいいのではないか」などと言い出した。もう大して影響力はない発言かもしれないが、状況が状況だけに、この先何がどうなるか分からない。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。