「本番に強い選手を育てる」 メキシコのタフな“育成ピラミッド”、現地日本人コーチが解説

塩沢氏の話に耳を傾けるケレタロU-14の選手たち【写真:福岡吉央】
塩沢氏の話に耳を傾けるケレタロU-14の選手たち【写真:福岡吉央】

過酷なリーグ戦で得られる経験と自信

 リーグ1部のケレタロでU-20アシスタントコーチとU-14監督を務める塩沢拓也氏は、U-20、U-17の選手たちがトップと同じようにリーグ戦を戦えることのメリットをこう説明する。

「メキシコ1部の下部組織にいい選手が集まってくるように、ピラミッドができています。そしてメキシコは広いので、17歳のうちからアウェーでいろんな環境の差を知ることができて、(メキシコ湾沿いにある)ベラクルスだと気候や湿度が高く、日本みたいな気候で、芝も長くて苦労する。(アメリカとの国境にある)ティファナへはメキシコシティまでバスで3時間かけて出て、そこから飛行機で移動するなど時差が2時間あって、ピッチは人工芝。さらに代表に入れば海外遠征も経験できる。グラウンドに立った時の自信、過去の経験から、本番でいろんな状況が起こってもより柔軟に対応することができます。

 毎週試合を繰り返していくなかで、選手たちは自分の武器が何かを分かっていて、厳しい状況のなかでも特徴を発揮でき、プレーの選択肢が蓄えられる。物怖じせず、異なる相手とプレーできるだけの十分な経験を積めます。U-17、U-15で才能のある選手は上のカテゴリーへ飛び級でプレーすることが普通だし、そうなると同年代とやった時に、落ち着いて自信を持ってプレーできるんです。メキシコは何位でリーグを終えるかよりも、リーグの最後3、4節でどう状態を上げてリギージャ(プレーオフ)に入るかが大事になりますが、それを若い世代から経験できるのも大きいですよね」

 また、ケレタロでU-16アシスタントコーチを務める給田洋右氏も、「U-14、15あたりから、次の世代に昇格するのが一気に難しくなります。各世代の人数は24、25人。全員が上がれるわけではなく、“質のピラミッド”がある。遠征はキツい。ティファナ戦以外の移動で飛行機を使えるのはトップだけで、8時間、10時間かけてバスで移動します。遠いと1泊できますが、多くのチームがメキシコシティ周辺にあるので、ケレタロからバスで片道4、5時間かけて日帰りで移動。以前働いていたモレリアでは、朝4時に出て試合をして、夜中に帰ってくることもありました。バスのタイヤがパンクすることも普通にあるし、相当タフになりますよね」と明かす。

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