J1札幌選手、なぜ総額1億円の“報酬返納”を提案? 「ただの美しい話とは考えていない」

札幌一筋13年目の主将宮澤「北海道への支援につながると考えた」

 また、6日には選手一同から報酬の一部をクラブに返納する申し出があったことが発表された。全28選手の4月からの6カ月分の報酬の一部で、総額でおよそ1億円弱になるという。申し出を受け入れるかどうかはまだ決めていないものの、自身も給与の減額を申し出ている野々村芳和社長は「クラブに勇気をくれる提案だったと思う。感謝の気持ちでいっぱい」と話した。

 これについて、選手を代表してキャプテンの宮澤裕樹が公式サイトを通じてコメントを発表しているが、「北海道への支援につながると考えた」という一文が印象深い。そして翌日には取材対応し、「家族もいるので、選手だけの感情では動けない」「自分たちのこうした決断によって、他チームやいろんな人に影響を与えるかもしれない」と、選手間で徹底して話し合ったことも明かしている。とりわけ後者に関しては強く意識している様子で、野々村社長も「他の団体やクラブが同調しなければいけないということでは決してない」と強調している。

「ただの美しい話だとは考えていない」

 地元・北海道出身、札幌一筋プロ13年目の背番号10はそう口にした。

 2008年に札幌入りし、以後、予算規模が小さく常にギリギリの経営を強いられていたクラブでプレーを続けてきた宮澤。サッカーに集中しながらも、経営面に自然と目が向くようになっていったのだと思う。実力者たちが財政的な理由からチームを離れていく光景を、それこそルーキーイヤーから幾度となく見てきたのだから。

 それにとどまらず、宮澤本人も契約非更新になりかけた年があった。前年以上の緊縮財政を強いられ、戦力としては絶対的に必要な選手でありながらも、ちょうど複数年契約の最終年だった宮澤に新たな年俸提示できるだけの予算が、札幌になかったタイミングで迎えた年末のことだ。

 最終的には当時、強化部長を務めていた三上大勝GMがなんとか資金を捻出してギリギリのところで契約更新にこぎつけたのだが、今日の札幌に欠かすことのできない生え抜きのバンディエラが、財政的な理由で札幌を離れていた可能性もあったのだ。クラブ経営の大変さや、それに伴う影響を直に感じながらキャリアを重ねてきた選手なのである。

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