世界各国リーグは6月再開も難しい? 新型コロナで歴史的危機も…サッカーは必ず復活する
【識者コラム】Jリーグの再開プランが“白紙”、先が見えない苦しい現状
新型コロナウイルスの影響により、Jリーグはさらなる延期となるようだ。4月中の再開は断念、5月末の再開を目指すという。
ヨーロッパではベルギーがリーグ打ち切りを決めた。欧州サッカー連盟(UEFA)は各国リーグに2019-20シーズンを完遂するようアナウンスしているが、現状では6月に再開できるかどうかというところ。感染のピークを越えていない日本の場合は、現実的に6月スタートも難しいかもしれない。
Jリーグの選手の中にも、すでに感染者が出ている。感染しない、させないために避けるべきと言われている「密集、密閉、密接」の“3密”のうち、密接はサッカーをする以上は避けられないところがある。練習試合(無観客)で感染したかどうかは分からないが、たとえ無観客で試合をしたところで選手や審判が感染する可能性は否定できない。
そんななか、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が新型コロナウイルスから回復した。有名人ではいち早く感染した田嶋会長だが、いち早く免疫を獲得したことになる。免疫がつくと当分は感染しないそうだ。免疫のついた人が増えれば、免疫獲得選手と免疫獲得観客によるリーグ再開は可能かもしれない。もしかして、このままリーグ再開を考えるよりも早いのではないかという妄想すら沸いてくる。まあ、それぐらい先が見えない現状だ。
感染の蔓延でサッカーが世界的にストップしたのは初めてだが、戦争での中断はしばしばあった。
第一次世界大戦時、ドイツのルフレーベン収容所ではルフレーベンFAが結成されている。この収容所の4000人の中に、スティーブ・ブルーマーがいた。イングランド代表として23試合にプレーし、28ゴールを決めたストライカーだ。ダービー・カウンティでは375試合238得点、一時代を築いたゴールゲッターと言っていい。
ブルーマーは対抗戦が行われたルフレーベン収容所で大活躍したわけだが、サッカーだけでなくクリケットでもスターだったという。実はダービーでは野球の選手としても活躍していて、3回も英国チャンピオンになっていた。引退後にコーチとしてドイツに渡ったら戦争になって収容所に入れられてしまった。ちなみにブルーマーは、後に監督としてレアル・ウニオンを率いて1924年のスペイン国王杯で優勝している。準決勝でバルセロナ、決勝でレアル・マドリードを破ってのカップ王者だった。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。