プロ未経験の日本人、なぜメキシコ五輪代表コーチに? 「今に見ていろ」の反骨心と“固い絆”

名古屋グランパスに所属しトゥーロン国際大会にも出場したMF相馬勇紀【写真:Getty Images】
名古屋グランパスに所属しトゥーロン国際大会にも出場したMF相馬勇紀【写真:Getty Images】

対戦した相馬の闘争心を高く評価 「彼だけ日本の中で違う感じだった」

 ちなみに、五輪に出場すれば日本とも対戦する可能性があるが、日本の五輪世代についてはどのような印象を持っているのだろうか。昨年二度対戦し、実際にスカウティングも行っている西村氏の評価は高かった。

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「すごく技術の高い選手が多く、自分たちのサッカーが整理されていた。相手の良さを消すよりも、自分たちのサッカーをする印象。代表チームはどこも時間がないなかで大会に挑まなければならないですが、日本はちょっと練習しただけで、ほとんどの選手が同じサッカーをしていて、凄いなと思った。メキシコでの親善試合では、両チームともに決定機を作りながらも決めきれない感じでしたが、トゥーロンで戦った時は事前に分析していて、磐田のFW小川航基はいい選手だなと思いました。それは他のスタッフも言っていましたね」

 一方で、まだまだ伸びしろも見えてきたという。

「もっと競争に強い選手が出てきたら、一皮むけるんじゃないかと思います。トゥーロンで名古屋のMF相馬勇紀を見ていて、彼だけ日本の中で違う感じだった。戦い慣れしていて、接触も恐れない。勝負に行っていて、小競り合いになっても怯まなかった。ウチのメキシコ人選手たちの中でも競り合うタイプの選手と対峙していましたが、全然見劣りしなかった。良い選手だなとみんなで話していました。

 でも、他の日本の選手たちは、メキシコの中でもそこまで闘争心がない選手たちと比べても、メキシコの選手のほうが強く見えた。日本はそういうところがチーム全体として強くなったら、もっと世界で勝負できるんじゃないかなと思います」

 西村氏の当面の目標は東京五輪出場だが、その後にはさらなる野望もある。メキシコの1部チームで指導者として優勝することだ。そしてクラブをステップアップしていき、いつかは監督になるという夢もある。

「僕が監督をしたいのは、ハイメも分かってくれている。いつか僕も独り立ちして、機会が来ればなと思っています」

 初めてメキシコに渡った2010年。今でこそほとんどないというが、当時はまだメキシコ国内では日本のサッカーが下に見られることが多かった。

「直接言われることはなかったですけど、『そんなところから来た元プロでもない奴が、何を教えるんだ?』という雰囲気はありました。『今に見ていろ、そのうちお前から俺を探すようになるぞ』と思ってやっていました」

 あれから10年。日本サッカーの成長とともに、自身もメキシコでキャリアアップを果たし、指導者としての階段を順調に駆け上がってきた西村氏。異国の地での挑戦に、まだ終わりはない。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)



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