プロ未経験の日本人、なぜメキシコ五輪代表コーチに? 「今に見ていろ」の反骨心と“固い絆”

西村氏は相手チームのスカウティングもぬかりなく、チームの勝利に尽力している【写真:福岡吉央】
西村氏は相手チームのスカウティングもぬかりなく、チームの勝利に尽力している【写真:福岡吉央】

東京五輪の出場枠は「2」 アメリカ、ドミニカ共和国、コスタリカと同組

 フォーメーションは4-3-3。ボールを保持していても、いなくても、自分たちが主導権を握り、常にチャンスを作ろうとするサッカーだ。 ボールを動かしながら、時にロングボールも用い、守備では高い位置で奪い、すぐに攻撃に切り替えることがチームのモットーだ。メキシコのクラブは3バック、5バックを採用するチームも多いが、代表ではA代表、年代別代表ともに4-3-3や4-2-3-1が基本。代表のなかでも体系化されており、将来を見据えた流れがあるという。

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「メキシコの子たちは競争、プレッシャーのなかでプレーする機会が多く、戦うことに慣れている。各チームでも選手の入れ替わりが激しいし、ちょっとチャンスがあればトントン拍子に上がっていける。そういうピラミッドが組織化されている」

 3月20日からメキシコ・グアダラハラで開催予定だった東京五輪の北中米カリブ地区予選は、新型コロナウイルス拡大防止のため延期となり、五輪本大会も来年に延期された。

 だが西村氏は、そうしたなかでも相手チームのスカウティングに余念がない。北中米カリブ海地区の出場枠は2つ。メキシコはグループリーグでアメリカ、ドミニカ共和国、コスタリカと同組になった。上位2チームが準決勝に勝ち上がり、決勝に進んだ2チームが五輪出場切符を手にすることができる。

「ドミニカはほとんど情報がなくて、探しているところです。選手は身体能力が高い。コスタリカはいつも難しい試合になるし、上手い選手が多い。黒人でフィジカルが強い選手もいます。アメリカは近年、若手世代が成長していて、すごくモダンなサッカーをする。欧州でプレーしている選手もたくさんいます。難しい組み合わせですが、ホームでの開催なので、サポーターの後押しもあるはず。いい雰囲気の中で3勝して、準決勝に進められればと思っています。監督も『まずは予選突破だ』と言っています」

 代表のメンバー構成はオール国内組。すでにA代表にも招集されているベティスのMFディエゴ・ライネス、ロシア・ワールドカップ(W杯)にも出場したアヤックスのDFエドソン・アルバレスも招集したいところだが、拘束力がないため五輪本番での招集を願っているという。世代的にタレントが豊富で、地元メディアからの評価も高い。現時点で、来年の五輪がこれまで通り23歳以下の制限がかかるのか、特例で24歳以下とされるのかはまだ分からないが、ベストなチームが作れれば当然、2012年ロンドン五輪以来、2大会ぶり2度目の優勝への期待も膨らんでくる。

「母国の五輪にメキシコ代表の一員として参加できる可能性があるというのは、すごくモチベーションになる。実現したらメキシコのために、メキシコが勝てるように、メキシコはこんなに凄いところなんだぞというのを見せたいし、その一員になりたいというのはすごくありますね。世界が今こういう状況で、五輪も延期になりましたが、日本での五輪にメキシコ代表として行ける日を楽しみにしています。ロンドン五輪の時も街はすごくお祭りモードで、W杯と同じように勝つたびに盛り上がっていた。監督もチーム立ち上げの時から、『五輪で優勝だ』と言っていますし、優勝したいですね」

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