東京五輪延期で男子サッカーはさらに“中途半端”に? メダルかW杯か…問われる日本の姿勢
サッカー界の価値で判断すれば、五輪は所詮“アンダー世代の大会”
FIFAとしてはU-17、U-20の上にU-23の世界大会という位置づけで五輪を利用しているわけだが、U-23が育成カテゴリーかどうかは微妙なところで、IOCのために仕方なくやっている側面がある。IOCのほうもW杯がある以上、五輪男子サッカーを実力世界一の大会にするのは無理。かくして男子サッカーは、中途半端な状態に置かれたままだ。
現在、世界のサッカーは国内リーグが停止状態にある。来季のスケジュールも現時点では判然としない。ヨーロッパと南米は同じく来年に延期された欧州選手権(EURO)、コパ・アメリカ(南米選手権)が優先なので、東京五輪にトップクラスの選手が参戦する可能性は低いだろう。日本にとってはメダル獲得のチャンスにはなるが、W杯予選の日程次第では五輪代表に戦力を割くのは難しくなるかもしれない。
JFA(日本サッカー協会)の方針はW杯優先だろう。それでいいと思う。自国開催の五輪ではあるが、サッカー界の価値で判断すれば、五輪は所詮“アンダー世代の大会”にすぎない。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。