「もっとうまくなりたい」 リオ世代のゲームメーカー大島僚太が誓う爆発的な成長

自信のあるものは何もない

 川崎にとっての2015年は、大島が独り立ちしたシーズンとして記憶されるかもしれない。

 これまでは中村憲剛こそが中盤の王様だったが、今季は中村がサポート役に回り、大島の方がより多くボールに触るゲームもあったほどだ。

 前後左右に動き回って味方のパスコースに顔を出し、トラップだけでマークを外し、味方の足下に次々とパスを入れる。

 ところが、今や自身の代名詞となっているパスに関して、それほど自信がないという。

「結局、昨シーズンはアシストもゼロでしたからね。憲剛さんみたいにFWがワンタッチで決められるようなスルーパスを出せているわけでもないですから」

 パスどころか、自信のあるものは何もない、とさえ大島は言う。

「フロンターレで言えば、パスは憲剛さん、シュートは(大久保)嘉人さん、ヘディングは(谷口)彰悟くんって、その分野に秀でている人がたくさんいるので、僕自身はこれといった武器はないですね」

 だが、武器がないことを悲観しているわけではない。真意は別のところにある。

「僕は、何か一つ突き抜けるのではなく、全部、高めたいんですよ。だから、目指すのは全ての要素を爆発的に大きくすることですね。ボンって」

 胸の前でボールを両手でつかむようなしぐさをして、それを広げながら続ける。

「サッカーに関しては、苦手なことがあるのがすごく嫌で、何かできないことがあるのが悔しいんです。だから、他のチームを見ると、ボランチがヘディングでバーンって跳ね返したりするじゃないですか。それなのに僕は『彰悟くん、お願い!』って。それも悔しい」

 プロたるもの、何か一つ突き抜けた武器がなければ生き抜けない、とはよく言われることだが、大島の考えは違う。

 例えば、爆発的なスピードを売りにしていても、相手チームが引いて守り、スペースを消されてしまえば、そのスピードは宝の持ち腐れとなってしまう。

「そうした不安があるまま試合に出るのが、嫌なんです。あいつ、あれを消されたら何もできないなって思われるの、恥ずかしいじゃないですか。だから、何でもできるようになりたいんです」

 振り返れば、プロに入ってからの5年間は、全ての要素を磨いてきた5年間だった。とりわけ最近は守備力を高めている。攻撃しかできないボランチと思われるのが嫌だからだ。ボール奪取に関して、今では中村やGK西部洋平からも「良くなった」と認められるようにもなった。

「高校時代やプロに入ったばかりの頃は、守備の仕方を知らなかったんですけど、今は奪い方のコツがつかめてきて奪うのが楽しい。だから守備の項目も大きくなってきたんじゃないかって思います。あとは、いろいろな要素をコツコツと伸ばしながら、どこかでボンって全部が大きくなるようなきっかけがあるといいんですけどね」

 

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