ブンデス1部昇格へ、遠藤航の本音 シュツットガルトが上位対決で露呈した脆さ

守るのか、1点を取りに行くのか… 3バック変更で生まれた迷い

 一方で、相手の選手交代からのシステム変更に対応しきれず、この同点ゴール後に再度リズムをつかみ直すことができなかったのも事実だ。

 遠藤は試合後に、次のように振り返っている。

「相手が2トップ気味にして前に人数をかけたのに対して、底の自分が3バック気味にするのか、それとも前にプレッシャーをかけに行くのかというところは、ちょっとはっきりしなかったと思うんです。最後、5バック気味にしてもう守るっていうところだったので、ある程度押し込まれるのは仕方がないイメージだったですけど。1点目を取った後は、2点目を取りに行く必要性を見せるべきだと思うし、後ろが点を取ったからってずっと下がってというのは、ウチのやりたいサッカーではないと思う。

 今日に関してはもちろん3バックにして、最後は1-0でという戦い方をしましたけど、基本的には2点目を取りに行くチームだと思うので、そこは、もちろん監督の交代をしっかり僕らも中で感じながら、守るのか、もう1点を取りに行くのかっていうところの判断をしていければと思います」

 地元記者もミスリンタットSDに、「守備固めは失敗だったか?」と質問をぶつけていた。

「違う、そうではない。あれは守備固めではなかった。相手が2トップでプレスをかけてきたのに対して、3バックに変更することでより攻撃の起点を作り出せるための策だった」と、ミスリンタットSDは説明していた。

 確かにゴメスからカラソルへの交代をする前の時間帯では、ビーレフェルトの前からのプレッシャーに対してシュツットガルトのビルドアップが難しくなり、ロングボールが多くなってしまっていた。サイドバックのシュテンツェルも「ボールを跳ね返されるから押し上げずに、自陣にとどまってしまった」と分析するように、セカンドボールのほとんどを相手に支配されていた。

 マタラッツォ監督は「ゲームのコントロールを取り戻すために」という意図で、3バックを決断した。試合メモを読み返すと、後半15分から同30分の失点シーンまで遠藤1人でミスパス、ボールロストが4度あった。パスをつなごうにも、前線に運ぼうにもボールの出口が全くなかった時間帯だ。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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