「ロンドンより上に行く」 リオ世代の”守備の要”植田直通が胸に抱く野望
互いに認め合うライバルの存在
リオ五輪アジア最終予選を直前に控えていた当時、植田はさまざまな思いを抱えながら、前に進もうとしていた。焦りがないと言えば、やはりうそになる。
「ふがいないし、自分に腹が立っています。成長できなければリオには行けない。成長しなきゃ、っていう焦りが少しあるのかな、というのが正直なところです」
もっとも、植田の焦燥は、今に始まったことではない。
常勝・鹿島で高卒ルーキーがプロ2年目から、それも経験を要するCBのポジションを任されるのは、極めて異例のことだと言っていい。
植田と同学年で、2011年のU-17ワールドカップ(W杯)に出場した”94ジャパン”でCBのコンビを組んだ岩波拓也(ヴィッセル神戸)は一昨年、素直に感服の思いを口にしていた。
「あいつは順調に成長していると思います。あの鹿島でレギュラーを張るのは本当にすごい。自分が鹿島の選手だったら、難しかったと思いますね」
岩波は、植田がパートナーであり、ライバルであることを公言している。
一方、寡黙な植田は「ライバルはいない」と言うが、心の中では同じ思いを抱いている。
「挙げるとするなら、岩波ですよね、そこは当然。高1で初めて会って、あいつはすでに代表チームの核で、僕はFWからCBに変わったばかり。こいつ、すげえなって。でも、あいつに追い付きたいっていう思いがあったから一気に成長できた。切磋琢磨してきたから、互いに上に行けていると思う。あいつは今、試合に出ているから、その点では悔しさを感じていて、やっぱり追い付かなきゃいけない、っていつも思っています」
だが、互いに認め合うライバルからの称賛も、植田にとって喜べるものではなかった。
「2年目のレギュラーだって自分ではだいぶ遅いと思っていて。1年目から自分の予想、予定とはずっと狂ってきている。それを取り戻さなければならないのに、こうしてロスしてしまった。これから修正していければいいとも思っているけど、もう、あまり時間がないとも思っていて」