「周りが僕を信頼してくれている」 鎌田大地が覚醒、ドイツで研ぎ澄まされる“得点感覚”
【ドイツ発コラム】DFBポカールのブレーメン戦、コスティッチのクロスに飛び込みゴール
フランクフルトの日本代表MF鎌田大地は今、どんどんプレーの幅を広げている。
4日に行われたブレーメンとのDFBポカール準々決勝(2-0)では見事なゴールを決め、チームをベスト4進出に導いたが、狙いどおりの会心のゴールと浮かれることもなく、本人はいたって冷静だ。自分がどのように得点機に関わるべきか、ゴール前にどのように入っていくべきかを、事前にきちんと分析している。
この日は本来のサイドハーフでスタメン予定だったが、MFセバスティアン・ローデが体調不良で欠場となったため、アディ・ヒュッター監督は4-2-3-1にシステムを変更し、鎌田をトップ下で起用した。ただ本人は、そのポジションから得点チャンスに絡んでいく点で難しさを感じていたようだ。
「急遽トップ下でしたけど、(そのまま)真ん中に入っちゃうと、クロスに対しても普通に(相手DFにマークに)つかれていることが多い。右サイドから中に入ったりとかだと、なかなか相手もつきづらい。サイドハーフのほうが(得点の)チャンスがあるかなと思っていました」
それでも得点につながったのは、センターからでも相手DFにつかれにくいような動きができていたからではないだろうか。中盤から長い距離を走って、ゴール前に入っていけるようになっていることがその要因として考えられる。そういえば鎌田は、5日前に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)ザルツブルクとの第2戦(2-2)後も、そのあたりに手応えを感じていた。
この日の得点シーンもそうだ。ただ必死に、ダッシュで走り込むわけではない。まだセンターサークル付近にいた鎌田は、味方の攻撃のリズムに合わせてするするとゴール前へ走りこんでいく。相手DFの背後に回り込みながら、左サイドをフリーで抜け出してボールを受けたMFフィリップ・コスティッチが、ある程度余裕を持ってクロスを上げられる状況を確認すると、“ここにボールが来れば1点”というポジションへパスを呼び込む。
「得点感覚を研ぎ澄ます」とは、どういうことか――。それはゴールできる位置を探り出すことではないだろうか。試合の状況、ボールと味方と相手選手のポジショニング。そこからゴールにつながる線を作るための点として、最適なポジショニングを探す。「ワンタッチゴーラーは運がいい」とか、「あれなら誰でも決められる」と言われたりもするが、そうではない。ボールがこぼれてくるところへ彼がいたのではなく、彼がいたところへボールがこぼれてくるような位置取りができているということなのだから。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。